止まらない咳、痰…雑な加湿器使いが招く「急性肺障害」

呼吸困難になることも/(C)日刊ゲンダイ
呼吸困難になることも/(C)日刊ゲンダイ

 風邪や乾燥肌を予防するため、冬は加湿器をフル回転させている家庭も多いだろう。
 たしかに、さまざまな不調の原因となる乾燥を防ぐには加湿が有効だ。しかし、その加湿器が健康を害してしまうケースもある。しっかり見直したい。

 昨年末、Mさん(40)は、しつこい咳や痰に悩まされた。外出しているときはなんともないのに、帰宅すると咳が止まらず、痰が絡む。微熱が続いて、体のダルさが抜けないことや息苦しさを感じる日もあった。

 市販の総合感冒薬を飲んでも、症状は一向に改善しない。〈タチの悪い風邪だろう〉と思って病院で検査を受けたところ、「過敏性肺臓炎」だと診断された。ロクに清掃もしないまま加湿器を使い続けていたことが原因で、アレルギーを起こしたという。

 国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院アレルギー内科の足立満教授は言う。
「<加湿器病>や<加湿器肺>と呼ばれる症状です。エンドトキシンという毒素を持つグラム陰性桿菌や、カンジダなどの真菌類(カビ)が加湿器の水の中やタンク内で増殖し、加湿器によって飛散されたそれらを吸い込むことで起こります。カビによるアレルギー性の過敏性肺臓炎や、細菌の毒素に対する炎症反応が複雑に関与していると考えられていて、発熱、悪寒、咳、痰、全身倦怠感といった症状が出ます。急性の肺障害を起こしたり、呼吸困難などの重篤な症状を招くケースもあるので、甘く見てはいけません」

■浄水はNG

 抗生物質が効かず、炎症を抑える作用があるステロイド薬や、他の治療が必要になるケースもある。加湿器を使うと体調がおかしくなる場合は、早めに受診したほうがいい。もちろん、加湿器病になる前にしっかり予防しておくことが大切。細菌やカビの繁殖を防ぐためには、加湿器のタンクは小まめに洗い、水は毎日取り換えるのが鉄則だ。

「さらに、必ず水道水を使うようにしてください。浄水器を通した水をつぎ足して使っていた人が過敏性肺炎になったケースが報告されています。浄水器を通した水のほうがなんとなく清潔なイメージがありますが、残留塩素が少なくなって、細菌が繁殖しやすくなってしまうのです」(足立教授)

 加湿器の種類も見直したい。加湿器には、超音波式、加熱式、気化式、ハイブリッド式などいくつも種類があるが、注意しなければならないのは超音波式だ。

 超音波式は水をつぎ足して使い続けることができるため、水が汚染されやすい。しかも、その水を粒子の大きい霧状にして飛散させるので、部屋中に細菌をまき散らしてしまうことになる。また、フィルターに水を染み込ませ、風を当てて自然に気化させる気化式も、フィルターを小まめに交換しないと細菌やカビが繁殖する危険がある。

「その点、加熱式は加熱することによって細菌の多くを死滅させることができる。加湿器を使うなら加熱式がおすすめです。ただし、熱に強い高熱性微生物もいるので、加熱式だからといって絶対に安心というわけではありません。やはり、小まめなタンク清掃と、毎日の水交換は必要です」(足立教授)

 加湿器病から身を守るために、まめな手入れを心がけたい。

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