痛みやつらさを医療者に上手に伝えるための「5W1H」

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ

 先日、日本緩和医療学会が公開講座「緩和ケアを誤解していませんか?~痛みやつらさが医療者に伝わるために~」を開催した。募集人数400人のところ650人を超える応募があった。専門家たちが語った内容は、患者やその家族の“思い込み”を正すものばかり。知っておきたいポイントを2週にわたり紹介しよう。

 昨年11月の内閣府の調査では、がん医療における緩和ケアを開始すべき時期を「がんの治療が始まった時から」と答えた人が21.8%、「がんが治る見込みがなくなった時から」と答えた人が13.9%。実は、これは間違った思い込みだ。

 緩和ケアは、病気に伴う痛みを和らげること。

「全ての患者が、がんと診断された時から、医療機関や診療科を問わず、また、入院、外来、在宅など診断の場を問わず、体の痛みだけではなく、精神的なものも含めてトータルで受けられるのが緩和ケアです。早期から専門的なチームが加わることで、患者の生命予後が改善し、苦痛緩和が得られることは、海外でも日本でも明らかになっています」(厚労省がん対策健康増進課・濱卓至氏)

 心身の痛みやつらさを、医療者へ本当に伝えていいのか。“厄介な患者”と思われ治療を手加減されるのではないか─―。さまざまな不安が生じるが、淀川キリスト教病院緩和医療内科・池永昌之副院長はこう言う。

「痛みやつらさは目に見えず、症状が一人一人違います。生活や背景にあるものも違う。教えてもらわないと、個別に応じた治療ができない。医療者も教えてほしいと思っているのです」

 時間に限りがある中で上手に伝えるには、「いつ」「どこが」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」の「5W1H」を考えておく。

「痛みも、単に“痛い”ではなく、いつからなのか、どこが痛いのか、どんなふうにか。そして、治療がスタートした後は、治療前後の変化です。たとえば、薬を服用後、痛みはどうなったか、など。医師を前にすると、緊張してきちんと伝えられないこともあるかもしれませんので、メモやノートに前もって書いておき、その通りに話すといいでしょう」(池永医師)

「○○○(の症状)で、×××できない」と、症状と困っていることを結び付けて話すといい。

「痛くて、トイレに行けない/眠れない」というようにだ。

「生活上で困っていることが具体的に伝わり、どの程度のダメージなのか分かりやすい。患者、家族、医療者が同じ目的を持って、今後の生活を考えた最善の治療を行っていけます」(池永医師)

 主治医に限らず、看護師に伝えるのでもOK。

 患者や家族から池永医師によく寄せられる質問は、次のものだ。

★せっかく医師が薬を出してくれたのに、効いていないなんて言いにくい

「痛みが続くのは、病気のせい。薬はすべての人に効くわけではなく、使ってみないと分からない。効くけど量が不十分の可能性もあります」

★痛みが強くなっているのは、病気が悪くなっているということ?痛みを取ったら、病気がどうなっているか分からないのでは?

「痛みと病気の進行はあまり関係がない。病気については検査でちゃんと分かります」

★痛みくらい頑張って耐えなくては。痛いなんて言ったら、治療が中止されるのでは?

「痛みと闘うのではなく、痛みはしっかり治療して、病気と闘っていきましょう」

関連記事