食生活だけが原因じゃない 便秘と前立腺肥大症の深い関係

写真はイメージ (C)日刊ゲンダイ
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 便秘に悩んでいる人の原因は、食生活ではないかもしれない。石井クリニック(さいたま市浦和区)の石井泰憲院長に話を聞いた。

「高齢男性の便秘には、前立腺肥大症が関係しているケースがよくあります」

 Aさん(62)は、数年前から便秘に悩んでいた。お腹が張って、不快感はマックス状態。家族から口臭や体臭を指摘されることもあった。「便秘が長引き発酵が続くと、ニオイが全身を巡って口臭や体臭として出る可能性がある」と書かれた新聞記事を読み、より便秘を何とかしたいと考えるようになった。

 意識して食物繊維を取るようにしたが、改善はあまり見られなかった。仕方なく市販の下剤を服用していた。

 前立腺肥大症と便秘の関係性を知ったのはつい最近のこと。健康診断で高血圧が指摘されたので診療所を受診した際、便秘についても相談。そのほかに、尿の出が悪いなどの悩みもあったので、同時に話した。

 医師から「前立腺肥大症では?」と言われ、泌尿器科で調べたところ、その通りだったことが判明。薬物治療で前立腺肥大症がよくなるにつれ、便秘も起こりにくくなった。大腸がんも疑い、念のため大腸内視鏡の検査を消化器科で受けたが、それは異常なしだった。

 前立腺肥大症は、前立腺の内側の部分が肥大化する病気だ。なぜ便秘が起こるのか。

「前立腺は膀胱の下部にある尿道括約筋の奥にあります。肥大化すると、中央に走っている尿道が圧迫されて尿が出にくくなる。尿がたまって膀胱が腫れると、今度は直腸を圧迫し、便が出にくくなり便秘になるのです」

■脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、脊髄損傷も

 Aさんは排尿障害をあまり重く捉えていなかったが、前立腺肥大症、排尿障害、便秘はそれぞれ相互関係にあるのだ。

「イキんで排便しようとすると腹圧が高まり、それによって前立腺が充血し、尿道がさらに圧迫されて排尿障害がもっとひどくなるのです」

 前立腺肥大症の日常的な注意には、「バランスのよい食事」「刺激物を取らない」「座ったままの姿勢を長時間続けない」「体を冷やさない」と並び、「便通を整える」が挙げられている。便秘が症状を悪化させることもあるからだ。

「便秘を改善したら前立腺肥大症が治るわけではありません。しかし、便秘が解消されると、前立腺肥大症で起きている尿の出の悪さが改善されることが多くあります」

 前立腺肥大症と並んで、食生活と関係ない便秘の原因として石井院長が指摘するのが、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、脊髄の損傷だ。

「ほとんどの内臓は、脳から出ている迷走神経に支配されています。ところが直腸や膀胱は、骨盤神経に支配されている。脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどで骨盤神経に問題があると、便や尿が出にくくなることもあるのです」

 便秘はやはり、放置してはならない。

■50歳で30%

 前立腺肥大症は男性ホルモンの働きが関与していることは分かっているが、はっきりとはまだ解明されてないこともある。加齢とともに患者は増え、50歳で30%、60歳で60%、70歳で70%といわれている。主な症状は、尿の勢いが弱い、出始めるまで時間がかかる、排尿途中で尿が途切れる、頻尿、残尿感、尿が終わったと思って下着をつけると尿がタラタラ漏れる、などだ。

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