1週間後、男性はまた高熱で来院。「実は以前から肩が痛かった」と言うので調べると、肩の筋肉の中に膿がたまっていた。そこには黄色ブドウ球菌があり、最初の高熱は、肩の黄色ブドウ球菌が血液に入って腎臓に至ったことによるものだとわかった。
「男性はそば打ち職人だが、荒れ性で手の傷から黄色ブドウ球菌が入って、肩で感染。膿がたまり、それが腎臓に運ばれ、高熱を引き起こしたのです。その背景には、重症糖尿病があります。健康な人なら、肩に膿がたまり、さらに重症腎盂腎炎に至ったり、ということは決してなかったでしょう」
■ほとんどが自覚症状なし
糖尿病は重症化すると、口渇、多飲、多尿、倦怠感などの自覚症状があるといわれる。
「血糖値が急激に上がって糖尿病を発症した人は、自覚症状に気づきやすいですが、ジワジワと血糖値が高くなってきたような人は、重症でもほとんど自覚症状がありません。本来は強烈な痛みに襲われる場合でも、糖尿病の合併症で神経障害をすでに患っていれば、痛みを察知できません」
足裏のタコから細菌感染し、潰瘍ができていても無自覚。「その潰瘍が骨まで達していて、気が付いた時には、足の切断しかないという唖然とするケースも珍しくない」と弘世教授は指摘する。
最悪の事態に至る前に、手を打つべきだ。