食べているのに栄養不足…疲労の陰に「新・栄養失調」あり

食べているからと言って安心はできない…
食べているからと言って安心はできない…(C)日刊ゲンダイ

 まずは、以下のチェック項目をやっていただきたい。

【症状】
□疲れやすい
□風邪をひきやすい
□やる気がない、集中 できない
□抜け毛が多い
□ED、あるいはED 気味

【生活】
□ご飯、麺類、パスタ など主食が中心
□肉をあまり食べない
□酒をよく飲む
□ストレスが強い
□甘いものが好き

「症状」と「生活」でそれぞれ1つ以上該当するなら、栄養失調かもしれない。「ちゃんと食べている」「どちらかというと食べ過ぎているくらい」という人も、安心はできない。

「日本における現代の栄養失調は、『食べられなくて起こるもの』とは限りません。食べているのに、栄養が足りない人が非常に多いのです」

 こう言うのは、日本で初めて栄養療法専門クリニックを開業した「新宿溝口クリニック」の溝口徹院長だ。

 40代のAさんは、疲れやすく、頻繁に風邪をひいていた。夜は熟睡できず、昼間は眠い。

「Aさんの普段の食生活は、朝はコンビニのパンとコーヒー、昼はラーメンやカレー、夜は立ち食いそば。ほぼ炭水化物(糖質)で占められていて、ビタミン、ミネラル、タンパク質の摂取がないに等しかった。栄養失調のサラリーマンの典型例です。糖質を過剰に摂取すると、その代謝のために大量のビタミンB群が消費されてしまいます。もともとビタミン類が不足しているのに、さらなる大量消費で、欠乏状態に陥っていたのです」

 ストレスが強ければ、体内でストレスに対抗するための“抗ストレスホルモン”が合成される。ビタミンB群はそのホルモンの合成を助ける働きがあるので、より一層消費され、欠乏状態に拍車をかける。

「現代の“新栄養失調”は、カロリーは取っているが、ビタミン類、中でも神経機能を正常に保ち疲労回復に役立つビタミンB群、ミネラル、免疫機能の調整に役立ち粘膜を強くするビタミンD、そして体をつくるタンパク質が決定的に足りません。加えて男性では亜鉛、女性では鉄分が少ない。さまざまな不調が出て当然です」

 こんな報告がある。秋田県大仙市では、平均寿命が非常に低かった。そこで、アルブミン値を積極的に上げる食事指導が取られた。アルブミンは血液中に含まれる重要なタンパク質で、この数値が低いと生存率が下がることが実証されている。

「アルブミン値はタンパク質の摂取で上がります。大仙市では1日の目標値を成人男性60グラム、成人女性50グラムとした。牛肉なら300グラム、卵なら10個、魚の切り身なら3~4切れに相当しますが、毎日取るのは難しいので、肉、魚、卵、乳製品、大豆のタンパク質源をちょっとでも食べたら用紙に丸をつけるようにした。結果、まんべんなく十分な量のタンパク質を取ることができ、アルブミン値は上がり、動脈硬化が減り、平均寿命が上昇したのです」

“新栄養失調”を改善するには、「ビタミン、ミネラル、タンパク質を取れる食事」を徹底する以外に手はない。「安く早く腹いっぱい」だけを考えていると、Aさんの例も示すように、どうしても糖質中心になってしまうので、むしろ「糖質は食事の最後に食べ、極力減らす」を意識する。

「肉、魚、豆を積極的に食べてください。“肉は悪”というイメージが強いのか、圧倒的に肉の摂取量が少ない。当院ではアルブミン4.5を目標値にしていますが、そのためには体重1キロ当たり1~1・5グラムのタンパク質摂取が必要。タンパク質60グラムで、牛肉300グラム相当です。しゃぶしゃぶ肉が少量乗っているサラダを食べるくらいでは、到底足りません」
 
 ちなみに、取材直前の溝口院長の昼食は、「ステーキ300グラム、ライスなし」だった。

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