患者に聞け

【機能性腹部膨満】排便に苦しみガスも出ない

その苦痛は大変なもの
その苦痛は大変なもの(C)日刊ゲンダイ

 東京・神田に住む不動産仲介業の瀬戸喜一さん(仮名、60歳)は、年に2、3回の割合で下腹部に痛みが走り、塗炭の苦しみに襲われる。
 最近では3月上旬、JR山手線で事務所に向かうとき、下腹部に症状が表れた。

 ゴロゴロという腹鳴りも激しい。急いで途中下車をして駅構内のトイレに駆け込んだ。しかし、便もガスも出ない。便座に座ったまま、下腹部痛が少し落ち着いたところで、再び電車に乗った。
 ところが再び同じ症状に襲われる。1駅乗って途中下車し、構内のトイレを探した。
 20分ほど座っていたが、やはり便もガスも出ない。下腹部の痛みにたまりかね、汗を流しながらタクシーに飛び乗った。

 自宅近くの主治医を訪問。浣腸を2度行い、ようやく排便できて苦痛から解放された。

 その前は昨年の秋だった。自宅で耐えられないほどの腹痛に襲われ、歩くこともできない。救急車で病院に搬送された。

 瀬戸さんが言う。
「5年前、私は東京逓信病院(東京都千代田区)で、胃がんの手術を受けて胃を全摘しています。以来、半年に1回定期検診を受けていますが、幸いがんの再発や転移の兆候はありません。ただ年に2、3回排便に苦しみ、ガスも出ないという症状が続いています。この病態を、『機能性腹部膨満』と言うのだそうです」

■消化管系手術経験者に多い

 便秘や腹部膨満(腹が張った感じ)は、胃の運動低下や消化器機能の変調、ストレスなど心理的な要因で起こる。
 慢性の便秘や、過敏性腸症候群と似た症状だが、胃など消化器官系の手術経験者に多いという。

「腹鳴りがして、排便やガスが出ない。その苦痛は大変なものです。ひどいときは、浣腸ではとても無理で、尻から空気を入れながら、寝た状態で腹部を中心に体を左右に動かすという対症療法を受けるんです。それでようやくガスが出て排便できるようになります」

 浣腸の利用も対症療法だが、毎月1回、瀬戸さんは逓信病院に通い、「大建中湯」という漢方薬と、「マグラックス」という医薬品をもらい、朝、昼、晩の食後に1日3回服用している。いずれも便を軟らかくしたり、胃腸の状態を改善する薬だそうだ。

「症状が落ち着いたり、仕事が忙しかったりすると、うっかりこの薬を飲み忘れてしまうことがあります。すると、腹痛が始まるわけです」

 担当医師からはほかに、バランスのとれた食事、十分な睡眠、ストレスをためないようにとアドバイスを受けている。

「食事の量を少なめにして、1日5回に分けて食べています。また、ストレスをためないように、なるべく多くの睡眠をとり、毎朝、自宅近くの公園で行っているラジオ体操に参加した後、1時間の散歩を日課にしています」

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