頻尿に効く意外な薬 ポイントは「必要時だけ服用」と医師指摘

頻尿の原因はさまざま
頻尿の原因はさまざま(C)日刊ゲンダイ

 頻尿には、過活動膀胱、前立腺肥大症、心因性頻尿などさまざまな原因がある。治療の中心は薬物治療。抗コリン薬などが主に使われるが、石井クリニック(埼玉・浦和)の石井泰憲院長は「頻尿の原因はさまざま。患者によって薬を使い分けなくてはならない」と話す。私たちが知っておくべきことは?

 20代のAさんは1時間強の通勤中、3度もトイレのため途中下車し、仕事中も何度となくトイレに行きたくなる。Aさんを診た石井院長は「過活動膀胱」と診断し、抗コリン薬を起床後すぐに飲むように指示。すると、1回もトイレに寄らずに出社できるようになり、仕事中も何度もトイレに立たずに済むようになった。

 70代のBさんは前立腺肥大症で頻尿だが、普段は自宅で過ごしている。トイレには、いつでも行けるので困っていない。

 ただ、週1回のデイサービスの日、送迎バスに乗る1時間半は、すぐにはトイレに行けない。途中、数回停車してトイレに寄ってもらわなくてはならず、苦痛に思っていた。石井院長は、デイサービスの日だけ、消炎・鎮痛薬「ロキソプロフェン」を乗車30分前に飲むように勧めた。すると、尿意の心配なく安心して乗車できるようになった。

 40代のCさんは、映画や舞台の鑑賞中、必ずトイレに行きたくなる。検査では異常が見つからなかったが、Cさんにとっては深刻な問題だった。石井院長のアドバイスで、「ロキソプロフェン」を鑑賞30分前に飲むようにすると、尿意を感じずに最後まで鑑賞できるように。次第に自信がつき、薬なしでもOKになった。

■検査などで安全性を確認

 石井院長が、頻尿や、突如の尿意を催し我慢できない尿意切迫で来院した患者にアンケートを取ると、困る時を「一日中」と答える患者もいれば、「夜間のみ」「昼間のみ」「午前中のみ」「排尿できにくい状況の時」などと答える患者もいた。

「一日中であれば作用時間が長い抗コリン薬が適していますが、限られた時間、条件の頻尿なら、長時間の薬効性は必要ない。その時だけに効く薬を飲めばいいし、普段のBさんのように頻尿でも困らない状況なら、薬を飲まなくていい。どんな時に困っているかによって、薬を使い分けるべきです」

 石井院長は、乗車、会議、映画や舞台鑑賞など、限られた時間や条件で困る頻尿・尿意切迫の患者に種類の違う薬を予防的に飲んでもらい、効き目を比較検討した。具体的には、抗コリン剤、ロキソプロフェン、抗うつ薬だ。

「『満足』と答えた患者はロキソプロフェンで7割、抗コリン薬で4割。これらの頻尿と尿意切迫には抗うつ薬が処方されることもよくありますが、私の調査では、満足と答えた人はゼロでした」

 ロキソプロフェンは服用した時だけ腎臓での尿の産生を少なくし、膀胱容量を増加させる。しかも、服用30分で効果を発揮し、4時間ほどは作用が持続する。

「頓服的に使えば、消化器症状や腎機能障害によるうっ血性心不全などの副作用も見られませんでした。私は、限られた時間や条件の頻尿、尿意切迫には、検査などで安全性を確認した上で、頓服として、ロキソプロフェンを勧めています」

 また、抗コリン薬を使う場合も、複数の種類があるので、どれを選ぶかで使い勝手が違うという。

「前出のAさんは通勤時間の頻尿が一番の悩み。効き目が早く出るタイプを、本来の“食後”ではなく“起床後すぐ”飲むことで、悩みを解消できました」

 頻尿よ、サラバだ。

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