老化早める物質「AGE」は食事の工夫で蓄積量が抑えられる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ヨボヨボのオジサンにはなりたくない。そう思っている人は血管や皮膚の老化を早める老化物質「AGE」に注意したい。体内に蓄積すると、動脈硬化、糖尿病、がん、アルツハイマー型認知症といった病気になるリスクもアップする。老化研究の第一人者である久留米大医学部教授の山岸昌一氏に詳しく聞いた。

 中高年になると、徐々に体の衰えを感じるようになる。ただ、老化の進行には個人差があり、高齢になっても若々しい人もいる。こうした差を生んでいるのが、近年発見された老化物質「AGE」なのだ。

「AGEは終末糖化産物とも呼ばれ、糖とタンパク質が加熱されることによって結合した物質です。体内にたまると、内臓、筋肉、血管、脳など体中のタンパク質の働きを低下させます。AGE化したタンパク質は、細胞表面のAGE受容体と結びつき、炎症や臓器の障害を引き起こします」

 心臓や神経の細胞は、生まれてから死ぬまでほとんど入れ替わらないため、AGEの影響を強く受け、アルツハイマー型認知症や心筋梗塞といった病気を引き起こす可能性が高まる。

 また、コラーゲンがAGE化すると、皮膚の弾力が低下し顔のたるみやしわ、筋力の低下の原因にもなるという。実年齢以上に顔が老けていたり、握力が低下している人はAGEが多く蓄積している可能性が高いのだ。

■「揚げる」より「蒸す」「煮る」

 イタリア人約1000人を対象にした研究では、AGEの蓄積量が多い人ほど歩くスピードが遅く、6年後の死亡率が高くなることがわかっている。また、AGEの蓄積量を抑えると、アンチエイジングを促す長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の働きが活発になるという。若々しく長生きするためには、AGEから体を守らなければならない。

 そのためにはどうすればいいのか。

「AGEは食べ物から取り込まれる場合と、体内で作られる場合の2通りがあります。食べ物なら、タンパク質と糖が加熱されて茶色くなったホットケーキのようなものに多く含まれています。また、AGEは高温で加熱するほど含有量が多くなるので『生→蒸す→煮る→炒める→焼く→揚げる』の順番で増えていきます」

 つまり、肉料理なら揚げ物や焼き肉より「しゃぶしゃぶ」や「蒸し料理」を選ぶのがコツ。そうはいっても、揚げ物や焼き物をまったく食べないというのは難しい。

「揚げ物や焼き物を毎日のように食べている人は、3回に1回でいいので茹で物や蒸し料理に変える工夫をしてみてください。それだけでも効果があります」

 米国の糖尿病患者を対象に行われた研究では、1日のAGE摂取量を30~50%カットすると、約4カ月で体にいい兆候が出始めたという。

 体内で作られるAGEは、食後の血糖上昇によって生じる余分な糖とタンパク質が結合することで生まれる。血糖値が高い時間が長いほど生成量は増えるので、食後の血糖上昇はなるべく低く抑えたい。まずは野菜から先に口をつけ、炭水化物は最後に食べるといった工夫が有効だ。

 一度体内に蓄積したAGEは、15年は消えないともいわれている。なるべく蓄積量を増やさないために、いまから対策を実行したい。

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