患者に聞け

【胃潰瘍】検査結果を待つ間、コーヒーの味がわからず…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「もしかしたら『胃がん』じゃないかと不安になりました。胃の周辺が少し痛いし、胸焼けもある。食事も進みません。酸っぱいゲップが時々出てきて、吐くために深夜に起き出すこともありました。排便にしても色が黒い。私の友人が最近、胃がんの手術で胃を全摘していますが、その友人から聞いた症状とそっくりだったのです」

 こう語るのは、東京都清瀬市に住む、遊技場マネジャーの大橋芳雄さん(仮名、59歳)だ。4月上旬、知人の紹介で自宅から3駅目にある総合病院を訪ねた。

 内科の担当医師に問診を受けた後、「1週間後に胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で検査をしてみましょう。今日は先に血液検査を行います。胃カメラの前夜は、8時以降の飲食はダメです。当日の朝も食事を抜いてきてください」と指示された。

 1週間後、妻と一緒に病院を訪ねると、担当医師から検査室でこう告げられた。

「血液検査の結果、B型肝炎など肝臓の異常は認められませんでした。それでは鼻から内視鏡を入れますので、ズボンのベルトを緩め、リラックスしてベッドにあおむけに寝てください」

 両側の鼻の穴から麻酔を噴霧された後、体を横向きにされ内視鏡を入れられた。違和感は少しあったが痛みはまったくない。

 内視鏡は鼻からゆっくりと喉を通過して、胃の中に入った。

「20分ほどの検査だったでしょうか。『病理検査のために胃の細胞組織も採取しますから』と説明されました。思ったよりも早く終わって、『検査結果は2時間後にわかりますので、待機していてください』と言われました」

 病院の近所の喫茶店で待つこと2時間。どんな結果が出るか……不安のあまり、コーヒーの味はしなかった。

 大橋さん夫婦は、再び検査室に呼ばれた。

「がんではありませんね。軽い『胃潰瘍』です。胃潰瘍の主な原因とされるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染も認められませんでした。原因は、加齢のほかに暴飲暴食かストレスでしょう」

 医師から診断を知らされ、がんを疑っていた大橋さんは心底ホッとしたという。

 もっとも、胃潰瘍だって甘く見てはいけない。胃の中は内側の「粘膜」から「漿膜」まで4つの層が重なっている。胃の中で食べ物を消化してくれる胃酸が、何らかの原因によって胃粘膜まで消化させたために胃壁がただれ、あるいは傷をつけてしまう。これが胃潰瘍だ。

 病状の進行(胃粘膜の欠損度)によって、4段階に分類されている。大橋さんは幸い、まだ「軽度」の症状だったが、最悪、ステージ4になると胃に穴が開くという。

 勤め先の人事問題で、大橋さんはこの半年ほどストレスがたまっており、同僚たちと毎晩のように深酒をしていた。

「医師から酒もほどほどにと言われましたね。ほかにも、コーヒーや香辛料を多く含む食べ物、飲み物の過剰摂取は避けてくださいとも注意されました」

 検査費用は自己負担で約6000円だったが、大橋さんには自分の命を考えさせられる価値のある検査だったそうだ。

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