患者に聞け

【脳血栓症】 気づくのが遅かったら脳梗塞になっていた

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 東京・新宿区内で、不動産仲介業を営む舟橋泰一さん(仮名、56歳)は、これまで2度入院したことがある。

 1度目は30代のとき。交通事故を起こし、足を骨折した。2度目は50歳を迎えてまもなくのころ。痛風に襲われた。尿酸値(基準3~7㎎/dl)が9を示し、3日間入院したのだ。

 以来、担当医のアドバイスで、プリン体の多い飲食物(ビールなど)の過剰摂取を避けてきた。それ以外は風邪もひくことなく病気知らず。この数年間、医薬品の世話になったことがない。

 ところが今年の2月、夕食中に妻から、「お父さん、話し言葉が少し変だよ。病院で診てもらったら。私も一緒に行ってあげるから」と指摘された。本人はまったく気がついていないが、どうも口調が巻き舌になっているらしい。

 舟橋さんは、「ただの仕事疲れ。酒の飲み過ぎと寝不足」と考え、睡眠時間をいつもより少し多く取って、市販の栄養ドリンクを飲んでいた。

 そのうち、妻や子どもとの会話で、言葉がすんなりと出なくなったことに気がつく。ろれつが回らないのである。

 また、まっすぐ歩いているつもりなのに、いつの間にか意識なく足が勝手に左の方向に向かって歩いてしまう。不安になった舟橋さんは、以前、痛風の治療でお世話になった新宿区内の総合病院を訪ねた。

 問診のあと、「CT検査」(コンピューター診断画像)のほか、「SPECT」(脳血流シンチグラフィー)という検査を受診した結果、担当医から告げられた。

「気づくのが少し遅れたら、脳梗塞になっていましたよ。よかったですね。現在の正確な病名は『脳血栓症』です。医薬治療を行いますから1週間ほど入院してください」

 脳の血管が破れて出血する病気が「脳出血」。血管が詰まって血液の流れが悪くなるのが「脳梗塞」。脳の血管が狭くなったところに血栓(血の塊)ができるのが「脳血栓症」だ。

「医師の説明では、私の場合は血栓の程度が小さかったようです。これが大きく完全に血管が詰まってしまうと、酸素や栄養が供給されず、脳梗塞という病気になってしまう。こうなると、治療を行っても言語障害や手足に後遺症を残してしまうらしいですね。いやほんと、初期の段階で気がついてよかったですよ」

 脳血栓症の初期症状は、舟橋さんのように軽い言語障害のほか、めまい、立ちくらみ、手足のマヒが起こる。食事中に箸を落としたり、頭痛なども伴う。

 治療にはカテーテルを使用した手術もあるが、舟橋さんは1週間入院し、血栓を溶かす薬の投与が行われた。

 高齢者の場合、こうした症状が起こると老化現象が原因と思い込み、つい見落としてしまう病気である。

「どうも普段の主人とどこか違うという妻の指摘が、私を助けてくれました。これは妻の功績で、退院後、夫婦仲がよけいに良くなりましたよ」

 舟橋さんは妻への感謝を口にした。

関連記事