ようやく“臨床判断値”できた「ロコモ」 潜在該当者には20代も

定期的な運動がロコモの予防になる
定期的な運動がロコモの予防になる(C)日刊ゲンダイ

 ロコモティブシンドローム、通称「ロコモ」は、骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉といった運動器に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態をいう。このロコモ度を判定する「臨床判断値」が発表された。自分ですぐにチェックできる。

「日本人の平均寿命は男性80歳、女性86歳。ところが実際に動ける健康寿命は男性70歳、女性は73歳と、10~13年短い。人生の最後の十数年は、家に閉じこもりか寝たきりという状態なのです」(九州大学整形外科・岩本幸英教授)

 国民生活基礎調査によれば、要支援、要介護の原因のトップは運動器障害。つまりロコモで、健康寿命を延ばすには、早い段階で自分がロコモかどうかを知り、対策を講じることが重要だということだ。

 ところがこれまで、「○○○ならロコモ」の「○○○」に当てはまる臨床判断値がなかった。「140/90㎜Hg以上は高血圧」というような具体的な数値があいまいだった。ロコモの認知度は決して高くない。その上、臨床判断値もないので、対策に結びつきにくかった。そこで研究の結果、ようやく臨床判断値が“誕生”したのだ。

「ロコモを判断するには、(1)下肢筋力(2)歩幅(3)身体状態・生活状況の3つを見ます。(1)~(3)のうち、ひとつでも引っかかれば、年齢、男女差、既往症と関係なくロコモと判断されます」(NTT東日本関東病院整形外科・大江隆史主任医長)

 (3)は「ロコモ25」という25項目の質問の答えで判断する。少々複雑なので、こちらは後回しにしてもいい。

「引っかかりやすく、すぐにチェックできる(1)と(2)から試したらいいでしょう。どちらかひとつなら(1)を」(大江医長)

 (1)は、「40センチの高さの椅子などから片脚で立てない」。右脚、左脚どちらもチャレンジして、一方でも立てなければ×だ。

 (2)は、できる限り大股で歩いた時の2歩幅(センチ)を身長(センチ)で割った「2ステップ値」が1.3未満だとロコモと判断される。

「パイプ椅子の高さはだいたい40センチ、地下鉄の椅子は37センチくらい。これらの椅子から何も持たずに片脚で立てなければロコモです」(大江医長)

■若い時に運動していても意味はない

 ロコモには、整形外科専門医がロコモと判断する「ロコモ度1」と、さらに進行した「ロコモ度2」がある。「2」は、要介護が近いうちに必要になるかもしれない、より深刻な状態だ。先に挙げた数字はロコモ度1のもので、ロコモ度2は、(1)が「20センチの高さの椅子などから両脚で立てない」、(2)の2ステップ値が1.1未満になる。

「ロコモ=高齢者」と考えている人が多いだろうが、実は違う。

「20歳以降から徐々に運動器の機能が衰え、しのびよるようにロコモになります。20代、30代でも早いうちに対処した方がいい人もいます」(岩本教授)

 800人を対象にした調査では、(1)の「40センチの高さから片脚立ち」ができなかった「ロコモと判断される人」は、男女ともに20代からいた。40~49歳では、男性で約15%、女性では約30%が該当した。

「この調査は健康な人が対象だったので、結果は少ない方だと思います。実際の該当者数はもっといるでしょう。デスクワーク中心で、運動をしていない人は、若くてもロコモである可能性がある。若い時に運動をしていても、今していなければ意味がありません」

 早速、(1)と(2)のチェックを! 「さらに(3)も」という人や、ロコモ予防のトレーニング「ロコトレ」を知りたい人は、「ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト」を参照すべし。

▼「ロコモ25」とは

「頚・肩・腕・手のどこかに痛み(しびれも含む)がありますか」「背中・腰・お尻のどこかに痛みがありますか?」「家の中を歩くのはどの程度困難ですか?」など、「からだの痛み」や「日常生活で困難な点」に関する質問が挙げられている。回答の程度によって加点していき、7点以上ならロコモ度1、16点以上ならロコモ度2と判断される。

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