患者に聞け

【脊椎圧迫骨折】自然に骨がくっつくまで待つのがつらい

ベッドで2週間“絶対安静”
ベッドで2週間“絶対安静”(C)日刊ゲンダイ

「脊椎は、こんなにも簡単に折れるものですかねえ?」

 腰の周囲を手でさすりながら話すのは神奈川県川崎市の食品販売会社で、マーケティングを担当している吉川修さん(仮名、59歳)だ。

 身長166センチ、体重61キロ。均整のとれた体形で、高血圧、体重過多といったメタボとは無関係だ。

 ただしスポーツは、子どもの頃から得意ではなく、運動というともっぱら散歩やゴルフ程度。趣味は読書と音楽鑑賞というインドア派だ。

 そんな吉川さん、3月中旬の日曜日に自宅で高さ30センチほどの踏み台に上り、居間にかかっていた壁時計の電池交換を行った。

 そのとき、たまたま遊びに来ていた2人の孫が、踏み台の後方で喧嘩を始めた。注意しようと振り向いた瞬間、踏み台から足を滑らせ、腰から床にドンと落ちた。

 息ができないほどの激痛が走り、腰を折り曲げたまま立てない。息子が運転する車に倒れ込むようにして乗り込むと自宅から数分先にある総合病院に向かった。

 レントゲンで腰の部分を撮影し、CT(コンピューター断層撮影)の検査を受診した結果、主治医から「腰椎の一番上の部分が骨折していますね。脊椎圧迫骨折です。ただし、ほかの骨や脊髄には損傷が認められません。とにかく入院してください」と告げられた。

 瀬戸内寂聴さんのファンだった吉川さんは、その瀬戸内さんが昨年夏、同じけがに遭ったことを思い出したという。

 体の大黒柱でもある脊椎は、首(頚椎)から胸椎、腰椎、尾椎まで30本ほどの骨で構成されている。吉川さんは腰椎の第1脊椎が骨折したのだ。

 入院期間は約2週間。ベッドに絶対安静の形で寝かされた。その間、ボルタレンという鎮痛剤を服用し、簡易のコルセットを装着した。

「腰を少し動かすだけでも痛い。しかし、もっと苦しかったことは痛みよりも、この年になって自分の娘より若い看護師さんに下の世話をしてもらったことでしたね。もう涙が出ましたよ。自分の足でトイレに行けるようになるまでの3、4日間お世話になったでしょうか。情けなかったですね」

 退院後、会社に1カ月間の休暇届を出した。1カ月後に通勤を再開したが、脊椎の骨折が完治したわけではない。現在も腰にコルセットをはめたまま、不自由な生活を送っている。腰のあたりが少し痛み、自由に折り曲げることもできず、歩行にしてもやや苦痛が伴う。

「この病気には手術というものがないそうで、骨が自然にくっつくことを待たなくてはなりません。その間、担当医から少しずつ運動をして足や腰周辺の筋肉をつけなさいと言われています」

 最近は毎朝、家の周辺を5キロ近く散歩しているという。

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