減らない“がん死亡率” 医師は「政府の取り組み不十分」と指摘

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がんの死者は減らない――。国立がん研究センターの発表にガッカリの人もいるだろう。2005年の人口10万人当たりのがん死亡者は92.4人だった。政府はこれを今年末までの10年間で20%減の73.9人にする目標を立てていたが、同センターが20日に明かした推計では17%の減少にとどまるという。

 同センターはその原因を喫煙率の高さとがん検診受診率の低さとしている。05年の喫煙率24.2%を半減させ、20%だったがん検診の受診率を50%に引き上げることを目標にしていたが、13年の喫煙率は19.3%、受診率は30~40%台にすぎない。何が原因なのか。

「政府の取り組みが不十分なのです」とは医学博士の米山公啓氏だ。

「死亡率を下げる一番簡単な方法が喫煙者を減らすことなのに、国はたばこを買いにくくしたり吸いにくくする取り組みを積極的に進めていない。せいぜい分煙を推進するくらい。BS放送には“たばこと肺がんは因果関係がない”と言い張る研究者も出ている。たばこの税収が欲しいので本気で危険性を訴えないのでしょう。検診は女性が子宮がんや乳がんの内診を恥ずかしがって受けたがらないため、受診率が低いと思われます」

 大腸検査では下剤を飲むなどの面倒を嫌って敬遠する向きも少なくない。

「胃がんを減らすにはピロリ菌を除菌するのが世界の常識なのに、国はこれを推奨しない。子宮頚がんワクチンも副作用のせいで助成金を出さなくなった。本気で大腸がんをなくすなら、特定検診の検便を義務化するべき。喫煙者の生保の掛け金を高くするような大胆な政策があってもいいでしょう」(米山公啓氏)

 政府はまだ本気になっていないだけ、なのかもしれない。

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