鼻詰まりが人生を左右 「子供は早急な対策必要」と医師警鐘

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 あなたの子供が「授業中、落ち着きがない」「居眠りばかりしている」と担任教師から指摘されたら、鼻詰まりが原因かもしれない。「鼻のせいかもしれません―親子で読む鼻と発育の意外な関係」(筑摩書房)を出す「鼻のクリニック東京」の黄川田徹院長(こどもの鼻ユニット診療部長)に聞いた。

「私は20年以上、鼻の病気の治療を行っていますが、この数年、お子さんの鼻詰まりが体へ与える影響の深刻さを痛感しています」

 A君(6歳)は席に座ると、15分ほどでモジモジし始め落ち着きがなくなる。小学校の担任からもしばしば指摘を受けていた。

 その2年ほど前から睡眠中のいびきがひどく、口呼吸も目立っていた。耳鼻咽喉科を受診したが、処方されたアレルギー性鼻炎薬では効果がなかった。

 別の病院では、睡眠時の寝苦しさを解消する気管支拡張剤を使用するよう指示されただけ……。そんな時「子供の鼻の治療に力を入れている」と知人から紹介され、黄川田院長の外来を受診。

「A君の鼻の中は重篤な鼻詰まり状態でした。お母さんは、夜中に何度も無呼吸を起こしていると言います。検査では、最長無呼吸状態は23秒でした」

 話し合いの上、鼻詰まり治療を開始。すると、睡眠中のいびき、無呼吸は全くなくなった。朝まで熟睡するようになり、食事量が増え、好き嫌いが減った。癇癪を起こさなくなり、集中力が上がった。担任からも注意されなくなり、成績は著しく向上した。

「鼻詰まりがあると息苦しさから口呼吸になり、睡眠の質が著しく低下します。大人もつらいですが、子供はより深刻。12~14歳ごろまではよく眠ることが知能を発達させる上で重要なのに、それが妨げられるからです」

■子供には自覚がない場合も

 特に前頭葉への影響が大きい。この領域にそなわる記憶力、注意力、集中力、認知・推理力、判断力、実行力、情動、動機づけなど“人間らしさ”を表す機能が低下してしまうのだ。

「覚えられない、計画し問題を解決できない、感情が不安定、意欲ややる気がない、といった形で表れます。鼻詰まりがひどいお子さんには、ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されたケースもありました。ところが、鼻詰まりが解消されると、ウソのように問題行動とされていたことが消えるのです」

 小児の鼻詰まりは、アレルギー性鼻炎やアデノイド増殖症が主な原因。生まれた時から鼻詰まりがある子供も多く、本人には当たり前の状態で、自覚がない。そのため、症状を伝える言葉を知らない。

 親も「たかが鼻詰まり」という意識が強い上、子供の鼻詰まりを重要視して積極的に治療を行う医療機関が少ないため、正確な診断・治療に結びつかない。

「鼻詰まりで食事の楽しさも知らず、息苦しい状態が“普通”のまま成長する。子供の鼻詰まりは人生を左右します。早急に対策を打つべきです」

「鼻の手術は困難なので子供にはタブー」と考える医師もいるが、黄川田院長は3歳児でも可能な、非常に安全な手術法を確立し、行っている。また、適切な薬の処方と鼻洗浄の指導でも、症状がかなり改善される子供がいるという。

◆子供の鼻詰まりが疑われる症状
いびきをかく/口を開けて寝ている/歯ぎしりをしている/頻繁に寝返り/集中力に欠ける/授業中に居眠り/落ち着きがない/すぐ癇癪を起こす/食事をよく噛まずに飲み込んでいる/ニオイに鈍感/身長の伸びが遅い

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