ハッキリした症状は表れず…“隠れ脳梗塞”招く「4つの悪習」

これからの夏、水分補給も大切(写真はイメージ)
これからの夏、水分補給も大切(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 自民党の町村前衆院議長が脳梗塞で亡くなった。3年前に1度発症していて、今回は再発だった。もっともこの病気には、まったく症状が出ない「隠れ脳梗塞」もある。気づかずに放っておくと、次々と小さな梗塞が発生し、認知症や歩行障害を引き起こす可能性もある。東京女子医科大学医学部神経内科学の北川一夫教授に詳しく聞いた。

 脳梗塞は脳の血管が詰まって脳組織が壊死し、重篤な障害をもたらす。原因別に分けると「心原性脳塞栓症」「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」の3種類がある。心原性脳塞栓症は、心臓の不整脈(心房細動)によってできた血栓が脳の血管に飛来し、栓塞する。アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い血管が動脈硬化を起こし、血管が狭くなったり、閉塞したりして起こるタイプだ。この2種類は広範囲の壊死を引き起こす可能性が高いため、ろれつが回らない、手足がしびれて動かなくなるなどの明確な症状が表れることが多い。

 一方、ラクナ梗塞は、脳の細い血管が動脈硬化によって閉塞する。同じように軽い言語障害、手足のしびれや麻痺などの症状が出ることもあるが、梗塞自体が小さいため、詰まった場所によってはハッキリした症状が表れない。そのため、「隠れ脳梗塞」とも呼ばれている。たまたま受けた脳ドックやMRIによって見つかるケースが多いという。

「ラクナ梗塞は、高血圧を有する高齢者に多い病気とされています。高血圧が続くと、血管の内壁が常に刺激を受けて傷つくため、強度を保とうとして血管内膜が硬くなります。柔軟性を失った血管は血栓が形成されやすく、梗塞を起こしやすい。ラクナ梗塞は高齢者にとって非常に身近な病気なのです」

 ところが近年、食生活の欧米化などに伴って、比較的若い40代にもラクナ梗塞が起こるようになってきたという。

「細い血管が詰まっているため『ラクナ梗塞』と診断されますが、原因としてはアテロームプラークの原理に近く、小さい粥腫が、脳の細い血管が太い血管から枝分かれするところに生じ、同部位に生じた血栓によって細い血管を根元から閉塞するタイプの梗塞が多いようです。(1)高血圧(2)肥満(3)メタボリックシンドローム(4)喫煙者という条件が揃っている人は、40代から注意が必要です」

■いずれ重大病につながる危険も

 細い血管で起きた梗塞はひとつだけなら大きな問題はないが、脳全体の細い血管が軽度の障害を受けている証拠。生活習慣を改善しなければ、他の脳血管も閉塞してしまう可能性が高い。症状が出ないまま脳のあちこちにラクナ梗塞が起こり、少しずつ症状が進行していく多発性脳梗塞になれば、認知症や歩行障害を引き起こし、転倒して寝たきりになるリスクも高くなる。

 前記の4つの悪習を持つ40代以上の人は、一度脳ドックを受けてみるのもいいだろう。もしラクナ梗塞が見つかっても、生活習慣の改善を行えばその後の人生を健康に過ごせる可能性が高い。しかし、知らずに放置したままだと、いずれ複数の細い血管や太い脳血管が詰まって命に関わる危険がある。

 ラクナ梗塞の一番の危険因子である高血圧の人は、もちろん注意が必要だ。血圧の正常値は一般的に「最高120mmHg/最低80mmHg」とされているが、血圧が上がる高齢者の場合は、せめて「140/90」以下を保つように心がけたい。

 日常生活では、交感神経活性が高まる朝方や熱い湯への入浴に気を付けること。血圧がさらに上昇して、梗塞や出血を起こしやすくなる。

 また、脱水によって体内の水分が減少し、血液が濃縮状態になった場合も脳梗塞のリスクを伴うという。

「すでに血液が濃縮気味なメタボの人が、水分を補給せずに汗をかいて痩せようとサウナに入るのは、脱水を誘発する危険があります。高齢者は寝汗による脱水が脳梗塞のリスクになるので、就寝前にしっかり水分補給をしましょう」

 症状がないからといって安心するのは禁物だ。

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