子供の食物アレルギー 6歳からの「食物経口免疫療法」で治す

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供の食物アレルギーの治療で注目されているのが「食物経口免疫療法」だ。うまくいけば、食物アレルギーと手を切れるかもしれない。しかし、間違った考え、やり方も横行している。昭和大学医学部小児科学講座・今井孝成講師に聞いた。

 食物経口免疫療法について「食物アレルギーは、食べて治す」などと表現される場合がしばしばある。医師の口から発せられる言葉に、親たちは信じて飛びつく。しかし、食物経口免疫療法は安易にやってはいけない。重篤なアレルギー症状が誘発されるかもしれないのだ。

 まずは、食物アレルギーの診断方法から説明しよう。食物アレルギーは、原因となる疑いのある食物を少量ずつ食べ、アレルギー反応が出るかどうかを見る「食物経口負荷試験」で確認する。

「血液検査や皮膚検査で食物アレルギーを診断できる」と思っている人が、医師も含めて少なからずいるが、これらの検査は診断の可能性を探るだけで、最終的な診断には結びつかない。

「血液検査などで陽性と出ても、食物経口負荷試験で陰性(食物アレルギーではない)と出ることは珍しくありません」

 子供の食物アレルギーの4分の3は、鶏卵、牛乳、小麦が原因食物で、これらは3歳までに5割、6歳までに9割が治療なしで治る。問題は、6歳までに治らなかった1割だ。その後の選択肢は2通り。原因食物を一生完全に食べないか(完全除去)、「食物経口免疫療法」を受けるかだ。

 食物経口免疫療法は、(1)食物経口負荷試験で食物アレルギーと診断された原因食物を、(2)ごく少量から食べ始め、量を段階的に増減させ、目標量を食べられるようにする治療法だ。

 (1)で、原因食物をどれくらい食べると食物アレルギーが出るかがわかる。同じ牛乳アレルギーでも、100㏄までOKの子供もいれば、1㏄でNGの子供もいる。(1)と(2)が両方必要であることを、しっかり把握したい。

■間違った方法も横行

 決められた期間、決められた量を、決められた食べ方で毎日摂取し、アレルギー症状が起こらなければ量を増やす。最終目標は、昭和大学では牛乳なら200㏄。それを3カ月間続け、無症状なら、今度は14日間完全除去に戻し、15日目に病院で200㏄摂取。アレルギー症状が起こらなければ、治療終了だ。

「3カ月間無症状が続いても、14日間抜けば、15日目に取った時、5割はアレルギー症状を起こします」

 すると“200㏄(牛乳の場合)を3カ月間”からやり直す。多くても4~5回繰り返せば、最終目標量を取れるようになるという。

「ただし、経口免疫療法は現在研究的な取り組みなので、各施設でやり方は違います」

 方法はさまざまでも、きちんと経口免疫療法を行っている医療機関は、その危険性を重々承知している。

 決して安易に行える治療法でないことを子供と親に伝え、アレルギー症状を起こした時の細かい対応をはじめ、細部に至るまで目の届いた指示を与える。

 一方で、冒頭で述べたように、「食べて治す」という大まかな情報だけを伝え、“お任せ”にする医師がいるのも事実。(1)を飛ばして(2)から始めるという、専門医から見ると「本当は食物アレルギーではない子供に、経口免疫療法をしている」医師もいるという。

 非常に期待できる治療法だが、慎重さが必要なのは言うまでもない。

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