生活習慣改善が逆効果になることも…「禁煙」と「ヨーグルト」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健診でメタボリックシンドロームを指摘され、生活習慣を改善しようと意気込んでいる人もいるだろう。だが、やみくもに張り切ると逆に健康を害するなんてことになりかねない。
 
 禁煙すると血糖値の状態が悪化する――。英国の医学誌にこんな研究結果が発表された。英国人の2型糖尿病患者1万692人を対象に調査したところ、禁煙に成功した患者は、禁煙後1年間のHbA1c(基準値5.6%未満)が以前より0.21%上昇。その後、喫煙者と同レベルに低下するまで3年かかったという。これは、禁煙後の体重変化とは関連していなかったから驚きだ。

 11年前、喫煙習慣がある日本人の2型糖尿病患者を対象に同様の研究を行った「飯野内科」(福岡県筑紫野市)の飯野研三院長はこう解説する。

「私が行った研究では、2型糖尿病患者25例のうち、1年間禁煙に成功した15例はHbA1cが7.2%から8.2%まで悪化し、拡張時血圧も69㎜Hgから76㎜Hgに上昇しています。そうした悪化は禁煙後1年間続きました。英国の研究と同じく体重増加は関連していませんが、禁煙前のBMI(肥満度)や中性脂肪とは関係が認められた。つまり、メタボを合併する糖尿病患者=インスリン抵抗性が強い患者は、禁煙後に血糖値が悪化しやすいのです」

 飯野氏は、いまも多くの糖尿病患者を診察している。

 禁煙指導にも取り組んでいるが、禁煙後に血糖コントロールが悪化するケースは少なくないという。

「そのため、糖尿病患者はまず食事や運動による治療を強化し、血糖と血圧をより良い状態で安定させることを優先しています。禁煙は血糖と血圧が安定してから始めます。また、肥満の糖尿病患者に対しては、減量後に禁煙を開始するようにしています」

 もちろん、喫煙はさまざまな疾患のリスク要因になり、一時的な血糖コントロールの悪化よりも不利益は多い。が、禁煙をする前に、自分の血糖と血圧の状態をしっかり把握しておきたい。

 健康にいいといわれる食品の代表ともいえるヨーグルト。乳酸菌やビフィズス菌が腸内環境を整え、便秘や下痢を改善したり、インフルエンザやノロウイルスへの感染を予防したり、花粉症やアトピー性皮膚炎に効くとうたった商品もある。たしかに、さまざまな健康効果があるのは間違いないが、一方では弊害も出ているという。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京都大田区)の辛浩基院長は言う。

「最近、健康のためにヨーグルトを食べ始め、脂質や血糖の状態が悪化する患者さんが増えています。それまでは、LDL(悪玉)コレステロール値が130~150㎎/dlで正常だったのに、ある時から急に180~200㎎/dlにまでハネ上がる。これはおかしいと思って〈最近、何か始めましたか?〉と尋ねると、〈ヨーグルトを毎日食べ始めました〉という患者さんが目立つのです。糖分が含まれているヨーグルトを食べ始めて、血糖値が悪化する患者さんもいます」

 乳製品であるヨーグルトには、乳脂肪分という脂質が多く含まれている。無糖のものでも100グラム当たり3グラム。白米は0.5グラムで、食パンは3.8グラムだから意外に多い。また、100グラム当たりのカロリーも60キロカロリーあり、加糖タイプなら倍近くハネ上がる。

「体に良さそうだからといって、1日に何個も食べれば脂肪分やカロリーの過剰摂取を招きます。加糖タイプや果物を加えて食べている人は、血糖コントロールも悪化させてしまうのです」

 ヨーグルトには“弱点”もあるのだ。

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