いますぐ糖尿病予防を始めるなら「減塩」を習慣化すべし

条件反射で醤油をかけるのを見直してみる
条件反射で醤油をかけるのを見直してみる(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病は50歳以降で急激に増えるが、“スタート”は50歳よりはるかに前だと指摘するのは、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也医師だ。

 糖尿病発症の“芽”は、多くは入社数年後の20代半ばから始まる。暴飲暴食が増え、車での移動が多くなり、“運動量”はぐっと減るからだ。30代後半~40代で血糖値やHbA1cなど数値の高さを指摘されるようになり、50代になってニッチもサッチもいかなくなる。

「糖尿病が怖いのは、知らないうちに動脈硬化が進行し、脳卒中、心筋梗塞のリスクを高め、突然死の恐れも出てくることです。同じく動脈硬化の要因である高血圧や脂質異常症があれば、リスクは格段に高くなる。早い段階で糖尿病、高血圧、脂質異常症への抜本的な介入をしなくてはならないのですが……」

 こうした専門家が鳴らす警鐘も本人に届いていないことが大半だ。

 自覚した時が吉日。すぐ対策を講じたい。基本は、バランスのとれた規則正しい食生活と適度な運動。しかし、これをすぐに実行し、かつ継続できる人はそもそも動脈硬化の進行を放置してはいないだろう。そこで坂本医師は「どれか一つ対策を実践するなら」と減塩を勧めている。

「一番最初の目標にしていただきたい。それによって血管への負荷が減ります。減量するためには食生活改善と運動が必要ですが、食を全般的に改善するのはなかなか難しく、運動だけでは減量しにくい。そこで、実際に出来ていそうで出来ていない減塩に取り組むのが効果的なのです」

■無意識の行動を見直す

 加齢は動脈硬化の大きな要因だが、それに反して加齢によって味覚が落ちるので、どうしても塩分量が増える。

「だから思い切った減塩が必要です。減塩すると体全体のむくみが軽減し、3日ほどで1~2キロ落ちます。減塩で自然と食べる量も減るケースが多いです」

 一口食べておいしいと思うような外食メニューは、極力避ける。「濃い味=おいしい」だからだ。味覚は習慣。最初は「味がしない」と思う薄味でも、習慣化すれば、その味が「普通」になる。減塩では、無意識の行動を見直すといい。焼き魚や漬物に条件反射で醤油をかける、冷ややっこにたっぷり醤油をかける、など。

 体重を意識するのも大事。坂本医師は、自身の経験も踏まえ、目立つ位置に体重計を置くことを提案している。

「風呂場へ続くルートに体重計を置く。自然と体重計に乗ろうと思うようになります」

 適度な運動は、自分を奮い立たせなくてもできるものを選ぶ。

「これも私の経験ですが、腹筋を刺激するトレーニング機器は、箱を開けて腹に装着するのが面倒で続かなかった。とにかく、面倒に思うようなことは続かないのです」

 糖質制限をはじめ、さまざまな生活習慣病対策が、ちまたにあふれているが、継続できなければ意味がないどころか、かえって害になりかねない。

 それをしっかり自覚して、遠回りでも確実にできる方法を探ることが重要だ。

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