“積み重ね”が重要 1時間に「2分間」の軽い運動で健康増進

日常的に体を動かすことが大事
日常的に体を動かすことが大事(C)日刊ゲンダイ

 1時間に2分、立ち上がって歩くだけで心筋梗塞や脳卒中が減少する――。米国のユタ大学などの研究チームの発表だ。わざわざスポーツジムに通い、時間をかけて運動をすることだけが健康のために良しとされた時代は遠くなりにけり。

 アメリカ人の飲食量や運動量などを調査する「米国全国健康栄養調査(NHANES)」というデータがある。3626人の男女に運動の強度を計測する機器を装着してもらい、運動量を分析。3年間、追跡調査をした。

 ユタ大学医学部のスリニバサン・ベドゥ氏をはじめとする研究チームは、この「NHANES」をもとに、時間当たりの活動量と死亡率の関係を割り出した。目的は、「健康増進の効果のある最少量の運動」を知ることだ。

 その結果、座っている1時間につき2分間を、軽い“運動”に置き換えれば、座り続けていた人に比べて心疾患や糖尿病のリスクが減少し、死亡リスクは33%減少するという。“運動”とは、ウオーキングや掃除、ガーデニングなど、日常的に行うものでOK。ベドゥ氏は「1時間につき2分間、体を動かすだけでも、蓄積されれば運動量は相当なものになる」と話している。

 日本でも、いま「日常的に体を動かすこと」の有効性について注目が集まっている。「運動と循環」などについて研究を行う東京工業大学社会理工学研究科・林直亨教授が言う。

「『Non-Exercise Activity Thermogenesis=非運動性活動熱産生』の頭文字をとって『NEAT(ニート)』と呼んでいます。意識した運動によらない体熱産生、つまり日常の生活で消費されるエネルギーのことで、これが健康維持のためにかなり役立つことが分かったのです」

 太っている人とやせている人を比べたある研究では、前者は長時間テレビを見ているのに対し、後者はスポーツクラブに行っていなくてもちょこまか日常的に動いていた。

 前出のベドゥ氏と同様に、「意識せずに動いていることが大きい。ほんのちょっとの積み重ねが非常に重要」と林教授は指摘する。

 NEATを増やすには、日常生活の中でこまめに動くこと。たわいもない動きでいい。職場では、プリントアウトするたびに自分で取りに行く。違うフロアのトイレに行く。ファクスやコピー取りは誰かに頼まず自分で行う。社内での連絡は直接相手の席に行って伝える。昼食は会社から離れた場所で取る。背もたれにもたれず、背筋を伸ばして座る。電車の中では立つ。休日は家事を手伝う――。こうした積み重ねが大切なのだ。

「私も、特に規則的な運動はしていませんが、エレベーターは使わず、階段を上ります。駅の階段などは1段飛ばしをすることも多い。大学の研究室がある6階まで階段で上ります。これらが結構な運動量になり、体重を維持できています」

 NEATなら、すぐにできる。高い入会金や会費も必要ない。

 ちなみに、ハーバード大学の調査では、テレビを見る時間が2時間延びれば、肥満のリスクが25%アップするという。

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