排便障害も…流行の「炭水化物抜き」は腸に悪いと医師警鐘

やみくもに炭水化物を減らすのは良くない
やみくもに炭水化物を減らすのは良くない(C)日刊ゲンダイ

「最近、腸の不調で来院する患者さんに新しい傾向が見られるようになった。共通しているのは“炭水化物抜きダイエット”をしていたか、現在、続行中ということです」

 こう話すのは、「『炭水化物』を抜くと腸はダメになる」などの著者である松生クリニックの松生恒夫院長。理由は何なのか?

「炭水化物とは、消化・吸収される糖質と消化されない食物繊維を合わせた総称です。炭水化物を取らないようにすると、結果的に食物繊維の摂取量が激減します。もともと、日本人の食物繊維摂取量は減っているのに、拍車をかける。すると、排便障害を起こすなどの腸ストレスを招いてしまうのです」

 これを確認するために、松生院長は来院する患者の1週間の食事メニューをチェック。ひどい便秘の30代の女性患者の場合、朝食は豆乳、ジュース、飲むヨーグルトのどれか、昼はほとんどが野菜サラダで、時々おにぎりやパンなどを追加、夜は野菜や海藻のサラダを中心に、ナムルや野菜炒めを加えていた。

「管理栄養士の計算では、その患者さんの1日の食物繊維摂取量は7・4グラム。18~49歳の女性の理想的な食物繊維摂取量は20~21グラム、男性は26~27グラムなので、かなり低い。これでは腸の内容物を肛門に送り出す大蠕動が起こりにくい。仕事がデスクワークで運動量も少なく、より腸の状態が悪化したのです」

 60代の男性患者は、糖尿病のために朝食は紅茶、昼食は肉類と野菜、間食にナッツ、夕食は焼き魚や焼き肉、野菜炒め、ウイスキーの水割り数杯の生活を半年間続けた。

 すると体重が78キロから65キロまで減少(身長170センチ)したが、同時に腹部膨満感と残便感に悩まされるようになった。

「私が提唱している『停滞腸』を起こしていました。腸の活動が衰え、蠕動運動などがほとんど起こらなくなっていたのです。この患者さんのようなケースは、特に男性で炭水化物の摂取を制限している人に典型的です」

■食物繊維が多く低カロリーの物を上手に摂取

 松生院長は食物繊維に焦点を当て、腸の健康維持のための効率の良い取り方を患者に指導している。カギになるのが、日本食品成分表をもとに松生院長が考案したオリジナル指標「F・I値(ファイバー・インデックス値)」と、「S・F値(サルバブル・ファイバー値)」だ。

 F・I値は食品100グラム中のカロリーと食物繊維量の比率で、低いほど食物繊維が多く低カロリー。

 S・F値は一つの食材に含まれる総食物繊維に対する水溶性食物繊維量の割合。数値が高いほど「水溶性」が多いので、便秘など腸の不調を感じる人は、S・F値が高い食材を選ぶといい。

 F・I値が低く、S・F値が高い食材は、主食では、そば、パスタ、ライ麦パン、野菜では、ブロッコリー、トマト、さやいんげん、オクラ、大根、キャベツ、春菊など。イモ類は、サトイモ、サツマイモ、果実は、アボカド、キウイフルーツ、リンゴ。肉は食物繊維がほとんど含まれていないので、F・I値とS・F値はない。

 野菜は全般的にカロリーを気にしなくていいが、主食では精白米、フランスパン、中華めん、クロワッサンはカロリーが高いのでF・I値も高くなり、要注意だ。

「ダイエット目的で炭水化物抜きをするなら、むしろ食物繊維が多くカロリーが少ない物を上手に取った方が、健康的に体重を落とせます。糖尿病対策が目的であっても、やみくもに炭水化物を減らすと、体重は落ちても健康のためには決していいことはありません」

 覚えておこう。