「初夏から夏は汗によるかゆみを訴える患者さんが増加します。今年は暑いので、汗トラブルの患者さんが例年より早く増えているようです」と話すのは、「よしき皮膚科クリニック銀座」の吉木伸子院長。それを裏付けるかのように、あせも予防薬市場の4月の店頭販売状況は前年比155%以上だという。
「ユースキン」の調査によると、「夏の汗による肌トラブル」を実感している人は4割。男性は首回り、背中、お腹回りなどにトラブルを抱えている人が多かった。
ワンピースやノースリーブ、生足&サンダルといった“風を通す服装”をしやすい女性に対し、男性の多くは夏でもネクタイを締め、スーツを着用しなければならない。汗をかきやすく、トラブルにも見舞われやすい。
「汗によるかゆみを訴える患者さんの多くは、“あせも”と自己判断されていますが、実際に診察してみると、汗による肌あれ、いわゆる“汗あれ”を起こしていることが結構あります。適切な対策を講じなかったために、かきすぎてひどい状態になって来院される方もいます」
あせもは、急激な発汗で汗管が閉塞し、汗が詰まって水疱ができた状態。急な発汗を避けることが対策になり、かかずにおけば数日で自然治癒する。
一方、汗あれは、乾燥や間違ったスキンケアが原因。原因を取り除かなければ、何度も繰り返すことがある。
「正常な皮膚はバリアー機能があるので、汗をかいてもその成分は皮膚の表面上にとどまり、時間がたつと蒸発します。ところが、乾燥や間違ったケアで角質細胞が傷んで隙間ができると、汗に含まれるアンモニアや塩分などの成分がその隙間から体内に入り込み、刺激になって肌があれ、チクチク、ピリピリしたり、かゆみが生じます」
いくらかゆくてもかきむしるのは、絶対にNGだ。「イッチ・スクラッチサイクル」といって、かくことで皮膚の表皮細胞が傷つき、修復するためのサイトカインが放出され、皮膚炎が悪化し、かゆみが増す。サイトカインによって、かゆみを増幅する仕組みである軸索反射も起こる。かゆみの“負のスパイラル”が生じる。
「かゆくなったら、まずは市販のかゆみ止めを塗ってください。それでも治まらなければ、皮膚科に来てください」
日常的なポイントとしては、乳液やボディークリームを塗り、保湿をして乾燥を防ぐこと。そして、体を洗う時はゴシゴシ強くこすったり、ボディーソープを使いすぎたりしないこと。
「乾燥は冬だけでなく一年中起こります。むしろ、夏はシャワーの浴び過ぎなどで、乾燥がよりひどいことも。乳液やボディークリームは必須アイテムです」
乳液などはサラッとしたタイプが比較的好まれるが、24時間潤いが持続しないと意味がない。自分の肌で試して選ぼう。
また、汗の吸収がよく、速乾性がある素材の衣類を着用することも効果的だ。スポーツ用品店には、吸収性、速乾性に重きを置いた衣類を置いているので、検討するのも手だ。
汗あれは子供にも起こるので、同様の対策を。