認識誤れば突然死も…知らないと怖い「狭心症」5つの勘違い

症状によっては軽症でも危険
症状によっては軽症でも危険(C)日刊ゲンダイ

 心筋梗塞を起こして突然死の可能性もある狭心症。しっかりした対策を講じたいが、間違った認識が横行しているという。東邦大学医療センター大橋病院循環器内科・中村正人教授に聞いた。

(1)【狭心症でないから問題なし】

 コレステロールなどが冠動脈に蓄積してプラークができ、血液の通り道が狭くなるのが動脈硬化。加齢で動脈が老化し、弾力性が失われるのも問題になる。狭心症の原因は、この動脈硬化。一般的に、動いた時に胸の圧迫感や痛み、息苦しさなどが生じる。

「血管が75%以上に狭窄しないと、狭心症の症状は表れません。心筋梗塞は突然発症を特徴とする疾患ですが、狭心症を発症直前に自覚するケースが少なくありません。このため、狭心症の自覚症状があった早朝には、心筋梗塞をいつ起こしてもおかしくないと考えるべきです」

(2)【治療で血管の狭窄を取れば“万事OK”】

 狭心症には、太ももの付け根や手首からカテーテル(細い管)を入れ、バルーン(風船)で狭窄を広げ、ステント(金属の筒)を留置する治療法がある。血液の通り道が確保されるので、息苦しさなどが解消される。その時点で患者は“治った”と思い、薬物治療をやめたり、禁煙を解禁したりする。しかし、これは非常に危険だ。狭窄部分は広がったが、元の原因の動脈硬化は改善されていないからだ。

「狭心症の治療は成功しても、動脈硬化の治療は続けなくてはならないのです」

(3)【心筋梗塞予防だけに注意】
 
 血管は全身に張り巡らされているので、動脈硬化が起こっているのは心臓に続く動脈だけに限らない。

「脳や足の血管に狭窄が起きている可能性がある。脳なら脳卒中、足なら壊死の可能性もある閉塞性動脈硬化症になります」

 心臓だけを考えていたらダメだ。

(4)【左胸が痛むから狭心症】
 
 まず、症状が出る段階まで心臓の狭窄が進んでいないことがある。前述の通り、これは“軽症”という意味ではない。心筋梗塞を起こすリスクは十分にあるので油断してはいけない。また、「左胸が痛い」など“ピンポイントで指させるような痛み”は起こらない。

「もし、患者さんがそのように訴えた時は、肋間神経痛や逆流性食道炎、心因性、血管のけいれんなど、狭心症以外を疑います」

 狭心症の場合、“胸の真後ろ”といった漠然とした場所に症状が表れやすい。

「症状の持続時間が1分以内ということはまずない。一瞬で消えるのも違う。たいてい3~5分。20分以上も、やはり狭心症ではありません」

 痛みの内容は、ズキズキより、圧迫感。締め付けられるような痛み。朝に起こることが多いという。

(5)【症状が軽ければ、まだ心配ない】

「心筋梗塞の患者さんに聞くと、“そういえば数日くらい前から症状があった”と話す人が多い。みなさん、非常に軽かったし、すぐ良くなったから放っておいたというのです」

 しかし、発作を起こしてしまっている。軽くても、心筋梗塞発症が迫っていることがある。「しばらく様子を見よう」は厳禁だ。

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