ビールで水分補給は? 世間に溢れる「熱中症対策」の○と×

これからが夏本番…
これからが夏本番…(C)日刊ゲンダイ

 熱中症を甘く見てはいけない。ここ数年の死者数は500人前後、20年前の7倍だ。高齢者が倒れるイメージが強いが、環境省は「野外で働く人も気をつけて」と注意を呼び掛けている。特に外回りの営業マン、建築現場作業員は正しい知識が必要。熱中症予防の正誤を調べてみた。

(1)塩分の入った水を飲むのが望ましい

「かく汗の量にもよりますが、仕事で外回りしている程度の人に塩分は必要ありません」(環境省環境安全課・担当者)

 塩分入り飲料や飴もあるが、かえって高血圧など害が出る可能性がある。日本人の平均塩分摂取量は1日11.1グラム(男性)で、すでに世界基準の5グラムを大幅に上回っている。屋外でサッカーをする場合などを除き、スポーツ飲料等は必要ない。(×)

(2)ビールでの水分補給はダメ

 運動後にキンキンに冷えたビールは、「極楽、極楽」。スペインのグラナダ大学の研究によると、「運動後の脱水症状改善にビールがよい」との結果が出ている。大量のミネラル分や炭酸が有効な理由だ。ただし、飲む量は男性なら500ミリリットル、女性は250ミリリットルまで。がぶ飲みはよくない。(△)

(3)のどが渇いたらすぐに水分補給する

「のどの渇きを覚えた時点で、すでに初期の熱中症と考えられます。夏場はのどが渇いていなくても、こまめに水分を取りましょう」(前出の環境省担当者)(×)

(4)水分は胃にやさしいぬるめがいい

 補給する水分は「ぬるめの白湯が一番!」と思い込んでいる人もいるが、真っ赤なウソ。理想の水温は、5~15度。冷蔵庫から取り出してコップに注いだ頃合いが、その温度。(×)

(5)冷却スプレーで体を冷やす

 熱中症の専門家・横浜国大の田中英登教授の実験によると、サーモグラフィー上は熱を下げる効果がなかった。冷却スプレーは清涼感を得る気分的なものと考えた方がいい。(×)

(6)信号待ちの間はデパートの玄関で涼む

 銀座の交差点。信号待ちの際に三越の玄関にひょいと入ったりする。

「大型商業ビルの入り口などは人混みによる熱気で湿度が高い。直射日光を避けて場所を変更しても、人の多い場所は危険です」(東京医大病院循環器内科・桑島巌兼任教授)

 厚労省の暑さ指数(WBGT)は、気温・湿度・風速・輻射熱を総合的に判断したもので、室内温度が28度でも湿度が55%を超えると、熱中症の警戒の必要がある。(×)

(7)辛いものを食べる

 タイ料理や四川料理などの辛い食事は発汗を促す。これによって適度に体温が下がり、熱中症予防になる。(○)

(8)ハンカチでこまめに汗を拭く

 汗は気化熱で体温を下げる役割がある。ハンカチで汗を拭くと、体温が下がらないため余計に汗が出る。拭くなら濡れたハンカチやタオル、汗ふきシートがいい。(×)

(9)清涼寝具で寝る

 スーパーなどで売られている「クールPCM敷パッド」(西川リビング)は、冷感物質(PCM)をパッドの中に閉じ込めたもの。

「エアコンをかけて使っていただくと効果的ですが、背中の接地面の体温が数度下がります」(西川リビング・広報)(○)

(10)顔が赤い人は寝かせて応急措置をとる

 一般に顔が赤くなるのは熱射病。この場合、イスに座らせて足に血液がいくようにする。

 顔が青白い人は熱中症の疑いが濃厚。こちらは足を高くして寝かせ、氷などで体を冷やす。(×)

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