子供が原因不明の痛み訴えたら「強直性脊椎炎」かもしれない

自覚してないこともある(写真はイメージ)
自覚してないこともある(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 子供が何らかの痛みを訴えるが、病院に行っても原因がわからない場合、可能性のひとつとして「強直性脊椎炎」がある。脊椎や関節、靱帯や腱の付着部に慢性的に炎症が生じ、背骨や手足の関節の動きが次第に悪くなる病気で、先月、難病指定された。

 この病気は、患者の7割が20代までに発症しており、特に男の子に多い。

 患者の8割以上で、ある特定の遺伝子が陽性になるが、はっきりした原因は解明されていない。遺伝的要因に加え、細菌感染など何らかの誘引で免疫異常が生じ、関節をつなぐ靱帯や腱といった骨の付着部に炎症が生じると考えられている。

「医師の間でも認知度が非常に低いため、初期では見逃されることがほとんど。診断がつくまでにかかった年数は平均9年です。現在、広く用いられている診断基準は、早期診断に不向きである可能性もあります」(大阪大学大学院運動器バイオマテリアル学・冨田哲也准教授)

 一方で、治療法は進歩しており、効果が高いとみられる生物学的製剤も登場している。早期に的確な治療が行われれば、症状の進行を遅らせられるという報告もある。

 背中、腰、お尻、首、胸、肩、股、ひざ、足関節、かかとなどの痛みを子供が訴えるなら、レントゲン検査だけでは不十分だ。

「MRIなら炎症が初期でも捉えられます。3カ月以上続く痛みがあるなら、強直性脊椎炎の知識がある医師のもとでMRIを含めた検査を受けるべきです」(冨田准教授)

 政岡泰雅さん(33)は、10代で強直性脊椎炎を発症。実名で、病気について語ってくれた。

 今思えば、あれも病気の症状だったのではないかということが、小学生や中学生の頃にありました。

 体育座りをしばらくしていると、すぐに立ち上がれない。鉛筆を握っていて離そうとしても、すぐに指がパーにならない。ギギギギッとひっかかるような動きをする。当時は何も疑問に思っていませんでした。

 高校、大学で緩やかに疼痛が増進しました。でも、2~3日耐えれば元に戻る。若かったこともあり、痛みに目を向けず、無理にテンションを上げ耐えていました。

■社会人3年目の夏、歩行困難になり退職

 しかし、居酒屋のバイトで皿を何十枚も一気に運べない日が出てきたりして、これはおかしいぞという気持ちが強くなってきました。所属していたテニス部のコーチに病院を紹介してもらい、初めて強直性脊椎炎という診断を受けたんです。しかし、認めたくないという気持ちが強く、激痛の日は落ち込むけれど、痛みがない日は普通の生活を送っていました。

 社会人になって病気の急性期を迎えました。痛みの程度を簡単に言うと、思考停止になるほど耐えきれない痛み。信号で立ち止まり、青になって歩きだそうとすると激痛が走りうずくまる。体勢を戻そうとすると、その動作がトリガーになり、痛みの連鎖が始まって動けなくなる。

 社会人3年目の夏、とうとう自力で歩けなくなり、トイレにすら行けなくなりました。会社に説明してもしっかり理解されず、辞めますと伝えました。

 その後、生物学的製剤のことを知り、処方してくれる医師を探しました。お金がかかるので、1年近く痛みに耐えながら学校の臨時職員でお金を稼ぎ、なんとか貯めてからやっと使えるようになった。

 それから再就職しましたが、痛みなく働けているのは生物学的製剤があるからです。

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