水虫で下肢切断も 糖尿病患者・予備軍は夏こそ「フットケア」

たかが水虫と侮ることなかれ
たかが水虫と侮ることなかれ(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病があると、血流障害、神経障害、免疫力低下の進行のために、さまざまな菌に感染しやすくなる。神経障害のために痛みやかゆみなどの感覚に鈍く、悪化に気づきにくくなる。健康な人なら全く問題ない小さな傷が、潰瘍、壊疽に進行し、下肢切断となってしまう。そのリスクが高いのが、蒸し暑い今の時季だ。

 夏は水虫(白癬)がひどくなりやすい。治りが悪い上に、細菌が入って感染を起こし、炎症から壊疽に至ることはしばしば起こる。糖尿病の患者数は、その予備群まで入れると日本人口の5分の1で、これは水虫と同じ有病率だ。

「お茶の水真菌アレルギー研究所」の比留間政太郎所長(順天堂大学特任教授)に「糖尿病患者は夏、どのような予防をすればいいのですか?」と聞くと、きっぱり。

「現実はそう甘いものではない。夏と限定するのが大間違い。基本のフットケアを、夏をきっかけに始め、一年を通してきちんと続けることが大事です。しかし残念ながら、基本のフットケアの認知度は低く、“下肢切断になるかもしれない”と真剣に考えていない患者さんが大多数です」

 フットケアをなおざりにしている患者が多いため、年間7000人が下肢切断になり、その数は増加傾向にある。生活の質維持のためにも、予備群も含め、次に挙げることを今から行動に移すべきだ。

■症状がないから大丈夫…は通用せず

 まずは水虫対策から。水虫には、足白癬(普通の足の水虫)と爪白癬(爪の水虫)がある。かゆみやジュクジュクした炎症がある足白癬と違い、爪白癬は自覚しにくい。爪の白濁や変形があれば爪白癬の疑いあり。

「足白癬だけなら抗真菌薬の塗り薬を使います。スイッチOTC薬といって、処方薬が市販でも買えますが、効力が弱いので、皮膚科医が出す処方薬の方が治りが早い」

 1日1回入浴後、または寝る前に薄く塗り、すり込む。

「かゆいところやジュクジュクしたところだけでは不十分。正常に見える場所でも真菌(水虫菌)が存在するので、靴を履いた時に隠れる場所はくまなく薬を塗ります。両足全体に1日1回外用すると、成人男性なら10日ほどで10グラムチューブ1本を使い切ります。薬が余る人は、塗る回数、量、範囲が狭すぎます」

 爪白癬があるなら、内服薬での治療になる。足白癬以上に治療期間は長く、完治には1年以上。根気が必要だ。

 次に、靴対策。

「足の病変は7割以上が靴ずれが誘因。なぜか“爪先が狭く、余裕のない靴”を履いて外来を受診する人が糖尿病患者さんに多い。こういった靴は足を圧迫して循環障害を来し、長時間履くことで、潰瘍ができやすくなります」

 中敷きが取り外せて洗え、柔らかいストレッチレザーの靴など、圧迫を軽減できるものを。甲の部分を紐で調整でき、靴の裏の革もフェルト素材などで柔らかいものがベスト。足の甲にフィットしたサイズにする。

 靴下をはかずに靴を履く人もいるが、足の損傷を防ぐために避ける。通気性のよい綿かウールの靴下をはくといい。

「『フットケアより甘い物を食べたい』という患者さんもよくいらっしゃいますが、壊疽になると、元の健康な足(なにもなかった状態)には戻れません。後悔しても遅い。“症状がないから大丈夫”という考えは、糖尿病患者さんには通用しません」

 基本のフットケアをしっかり実行しよう。

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