糖尿病や直腸がんも 「夏バテ」ひどければ別の病気を疑うべし

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「暑さが少し落ち着いた頃になると、疲労感を訴えてくる患者さんが増えます。“暑い盛りから続いているので、夏バテだと思っていた”とおっしゃるのですが、調べてみると別の病気が判明することがあるのです」

 こう話すのは、三木内科クリニック(東京・神田)の三木治院長。あなたの疲れ、本当に夏の暑さによるものか?

「体がだるくて、なんとなく元気が出ない」と来院した50代男性のAさん。

 検査の結果、空腹時血糖値240mg/dl、HbA1c10%の重症糖尿病とわかり、すぐに専門病院に入院することになった。実はAさん、何年も前から「血糖値が高い。再検査を」と言われていたが、自覚症状がないので、なんの手も打っていなかった。

 高血糖が続くと、それを薄めるために血管内の水分量が増え、尿量も増える。「糖尿病になるとトイレの回数が増える」とよくいわれるのは、そのためだ。

 一方で、夏は汗をよくかき、水分が失われやすいため、熱中症に陥りやすい。

「暑さで食生活が乱れ、清涼飲料水や缶コーヒーなど糖が入っている飲み物をたくさん飲みがち。だから、夏は血糖コントロールが悪くなりやすい。Aさんは『今年の夏は暑くて何度も熱中症になりかけた』と話していましたが、それは糖尿病が進んでいたからかもしれません」

■暑さに弱いバセドー病

 40代男性のBさんの受診理由は「夏バテがひどい」。細身の体形で、血圧が低く、顔色も悪い。採血すると、貧血だった。「そういえば、下血がある」とBさん。詳細な検査で、直腸がんが見つかった。

 30代女性のCさんは「暑さでフラフラし、だるい」と訴えていた。よく聞くと、以前から貧血気味だという。生理の状態から、婦人科を紹介。貧血は、子宮筋腫の出血によるものだった。

「生理がない男性は貧血の頻度が少ない分、貧血が見られる時は重篤なケースが考えられます。消化管の出血で貧血を起こしていて、Bさんのように『がんだった』ということも。女性の場合は、疲労感やだるさの原因が貧血である場合は多い。ただ、調べると子宮筋腫など婦人科の疾患が見つかることもあります」

 三木院長が研修医時代に診た20代女性のDさんは、内科の検査結果で、重度の貧血が判明。

「最初は、『夏くらいから膝が痛い』と整形外科を受診したのです。膝のレントゲン検査では異常が見つからず、疲労感もあったので、内科に紹介されてきました」

 20代女性の貧血は、珍しいことではない。しかしDさんは、さらなる検査で、貧血の背景に白血病があることが分かった。膝痛と白血病の関連性ははっきりしなかったが、「貧血は女性によくあるもの」とされていたら白血病の診断が遅れるところだった。

 60代男性のEさんは「暑さがこたえる。夏バテでげっそりやせた」と訴えた。原因は、男性ではそう多くはない甲状腺機能亢進症(バセドー病)。新陳代謝が異常に活発になるので、疲労感、体重減少が見られ、暑さにも弱い。

「『夏だから』という思い込みが、重大病を見逃すことにつながりかねない。1カ月以上続くなら、一度病院で検査を」

 特に、中高年男性では「過去に健診で高血糖を指摘された」という人は糖尿病が考えられる。顔色が悪く、フラつくなら、消化器系のがんかもしれない。また、眠気を伴う疲労感なら、睡眠時無呼吸症候群の疑いあり。

 女性の貧血では、「なぜそうなったか」のチェックを。甲状腺機能亢進症にも要注意だ。

関連記事