甘い飲み物で意識が混濁…「夏のダメージ」が突然死招く

猛暑で体は相当ダメージを受けている
猛暑で体は相当ダメージを受けている(C)日刊ゲンダイ

 一時より過ごしやすくなったと油断することなかれ。7月、8月と暑さに酷使された体は相当ダメージを受けており、突然死を起こしやすくなる時季でもある。気を付けるべきことは何か。

「糖尿病や糖尿病予備群の人は、“喉が渇いた。何か飲みたい”という欲求を、自然なこととしてすんなり受け入れてはいけません」

 こう言うのは、「しんクリニック」(東京・大田区)の辛浩基院長だ。

 糖尿病になると、ブドウ糖をうまく利用できなくなる。そのため血中にブドウ糖が増え、それを排出するために尿の量が増える。

 ただでさえ汗で体内の水分が失われやすい季節なのに、多尿で体内の水分はより失われ、脱水症状に陥りやすい。

 そこで失われた水分を補給しようと、喉の渇きを強く感じるようになる。熱中症の脱水症状とは違って、糖尿病が主な原因なので、いくら水分を摂取しても喉の渇きは癒やされない。

 加えて、ブドウ糖が吸収されないため、体は「ブドウ糖が足らない」と誤認識し、ブドウ糖を欲するようになる。ブドウ糖=甘いものだ。

「つまり、コーラや缶コーヒーのような糖の多い飲み物を飲みたくなる。その体からの欲求に負けて行動に移すと、危険なのです」

 糖を多く含む飲み物は吸収が早く、血糖値が500~1000㎎/dlまで急激に上昇する。

「すると、ケトン体と呼ばれる毒性を持った代謝成分が血液中に発生し、全身のひどい疲労感、腹痛や嘔吐、意識障害などを起こす。昏睡状態に陥って心機能や呼吸機能が著しく低下し、そのまま突然死に至る可能性もある。『ペットボトル症候群』や『ソフトドリンク・ケトーシス』と呼ばれています」

 水分摂取は、夏を無事に乗り切るための必須ポイントだが、糖尿病の人は、甘味がついた飲み物は絶対にNGだ。

■エアコンを我慢し脳梗塞に

 夏の心筋梗塞、脳梗塞の危険を指摘するのは、東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授だ。

 脳梗塞には、脳の動脈が血栓で詰まるラクナ梗塞や、血栓で血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞といった脳動脈の病気によるものと、心臓にできた血栓が脳の太い血管を詰まらせる心原性脳塞栓症がある。

「夏は脱水症状で血液がドロドロになりやすく脳の動脈が詰まる脳梗塞が起こりやすい。以前は冬に多いといわれていた心筋梗塞や心原性脳塞栓症も、屋外と屋内の急激な気温差や猛暑によるストレスで増えています。心原性脳塞栓症は、脳梗塞の中でも死に至る率が高く、非常に怖い」

 ペットボトル症候群対策と同様に、十分な水分摂取が必須。アルコール摂取、睡眠不足、喫煙にも気をつけなくてはならない。ビールを飲んで“水分摂取”と思っている人がいるかもしれないが、アルコールは脱水症状を促進させる。

「エアコンも上手に利用してください。体への負担を考えると、26度前後がベター。夜はタイマーをかける人がいるかもしれませんが、エアコンが切れると室温は上がり、暑さによるストレスで目が覚めたり、夜間熱中症になりかねません。27~28度に設定し、夜中もエアコンをかける」

 今しばらく、「夏」への警戒を緩めてはいけない。

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