老いても避けたい「骨粗鬆症」 知っておくべき判定法と治療法

治療は骨折する前に始めなくてはならない
治療は骨折する前に始めなくてはならない(C)日刊ゲンダイ

 老親の健康について心配なことはいくつもあるが、そのひとつが骨粗鬆症ではないか。介護が必要な寝たきりは、親のためにも自分のためにもなんとか避けたい。治療の開始時期など知っておくべきことは何か?

「骨粗鬆症だからすぐに治療を始めるべきと言われた」という電話が母親(67歳)からAさんにかかってきたのは先月。その薬は長く飲み続けると骨折のリスクが高くなるため、3年くらいしか飲めないとのこと。

 すぐに検査結果をファクスしてもらった。「腰椎正面」の骨密度は0.937グラム/平方センチで、同年齢の平均と比較すると107%、若年成人平均値(YAM値)と比較すると84%だが、「大腿骨全体」の骨密度は0.568グラム/平方センチ、同年齢との比較は79%、YAM値は61%だった。

 東京都健康長寿医療センター臨床研究推進センターの森聖二郎部長(骨粗鬆症外来担当医)が言う。

「YAM値が70%未満になると骨粗鬆症と判定します。70~80%未満は骨量減少。腰椎と大腿骨の2つを検査し、低い方の数字を採用します。ただし、骨折のリスクが高くなる『骨粗鬆症』を考える場合、骨密度だけでは測れません。骨密度はカルシウムの量なので、骨の硬さの指標になりますが、骨質はわからない。骨質のチェックも必要です」

 骨質は、糖尿病、腎機能障害、関節リウマチといった内科疾患があると低下する。まずは、これらがないかを知るべきだ。

 骨質の程度を測る検査はいくつかあるが、健康保険適用外や研究目的など一般的ではない。しかし、椎骨のレントゲンを調べると「骨質の情報」を取れるという。

「簡単に言えば、骨折しやすい骨かどうかがわかる。もちろん、現在すでに骨折が起こっているかどうかもわかります」

 親がピンピンしているから骨折していない――と思うかもしれない。骨粗鬆症による背骨の骨折は、骨がつぶれて変形していくので、痛みがない。3分の2は自覚症状がないといわれているのだ。身長が縮んでいたら要注意だ。

 検査の結果、骨折がすでに起こっていれば、すぐに薬物治療になる。ビスホスホネート薬など骨の破壊を抑制する薬や、フォルテオなど骨の形成を促進する薬を用いる。比較的作用がきつい薬だ。

「ごく少数ですが、長期的に使うと“薬の影響による骨折”を起こしやすくなるという副作用があります。ただ、すでに骨折があり、骨密度のYAM値が70%未満の人は、治療しなければ10年以内に6人に1人が“骨粗鬆症による骨折”を起こします」

■家族歴でもリスクに差

 薬を3~5年服用し、骨密度がよくなっていればいったんやめる。そうでなければ、メリットがデメリットを上回るため、継続服薬する。

 骨密度のYAM値が70%未満でも、レントゲンで骨折が確認されなければ、運動療法と食事療法で経過観察をするか、活性型ビタミンDや女性ホルモンの受容体の調整をするサームといった比較的作用の軽い薬を用いる。

「69%や68%といった70%に近い数字で50代以下なら、すぐに薬は使いません。年齢が60代以上だったり、YAM値が60%台手前なら、軽めの薬を飲んでもらいます。活性型ビタミンDなどは長期的に飲んでも大きな問題はありません」

 Aさんの母親は、幸いなことにレントゲン検査で骨折が認められなかった。週3回以上プールに通い、既往症はなく、食生活に気を使っていることから、運動と食事はクリア。年齢とYAM値から、活性型ビタミンDなどから始めることになった。

「骨粗鬆症のリスクは家族歴によって大きくなる。家系に骨粗鬆症の人がいれば早めに治療を行います。やせ形、喫煙・飲酒習慣がある人も骨折のリスクが大きいので早く治療を始めることがあります」

 重要なのは、骨粗鬆症の治療は、骨折を起こす前に始めなくてはならないということ。骨折してからでは遅いのだ。

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