Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【今井雅之さんのケース(2)】便潜血検査が陽性なら症状なくても大腸カメラを

 では、どうすればいいか。皆さん、会社の健康診断で便潜血検査を受けると思います。便に血が混じっているかどうか調べる検査です。がんやポリープ、潰瘍などがあると、出血しやすくなります。そのような病変からの出血をチェックするのです。

 ただし、痔などによる出血の可能性もあり、陽性となっても必ずしもがんやポリープとは限りません。便潜血検査が陽性で、大腸がんである可能性は、せいぜい4%。約30%は、がん化の心配がない大腸ポリープです。つまり、残りの6割超は、痔などの命に別条はないものといえます。

 つまり、便潜血検査は決して精度の高い検査ではありません。しかし、陽性者の4%に当たる大腸がんを持つ人が、自覚症状がないからといって、1年、また1年と放置して10年近くなると、今井さんのように末期になってしまうのです。

 便秘症の方などは、排便がいつ起こるか分からず、便潜血検査を煩わしいと思うかもしれませんが、検査そのものは簡単でコストも安く、大腸がんを見つけるための手段としてはもっとも推奨されるものです。もし陽性なら、症状がなくても次に大腸内視鏡検査を受けて、がんがあるかどうか確定します。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。