頭を打ってから発症まで時差 「軽度外傷性脳損傷」の基礎知識

大事故だけが問題ではない(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 次に、整形外科を受診しており、脳神経の検査を受けていない点。

 さらに、事故直後(受傷時)には意識障害があっても、受診時には意識を取り戻しており、診断書に「意識障害なし」と書かれている点。

 そして、脳の画像検査MRIでは「異常が映りにくい」点。現在の日本の医療は画像診断偏重のため、患者の不調は認められず、詐病や精神的なものと決めつけられることも少なくない。ただし、画像検査の進歩は目覚ましく、事故当時は画像検査で異常なしでも、MTBIについて詳しい医師によって、新しい機器で検査を受ければ、異常が見つかる場合も出てきている。

 Aさんは、MTBIの診断と同時に病院で処方されるようになったてんかん薬で、意識喪失やけいれん発作は治まった。しかし、右側の視力、聴力、嗅覚、味覚の障害、右手を強く握れない、記憶力低下をはじめとする高次脳機能障害などを抱えている。

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