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【鼻づまりの手術】神尾記念病院(東京・神田淡路町)

神尾記念病院の神尾友信院長
神尾記念病院の神尾友信院長(提供写真)

 創業100年を超える歴史をもつ耳鼻咽喉科の専門病院。人工内耳の手術を日本で最初に行うなど耳領域の治療を得意としてきたが、近年は鼻領域の治療にも力を入れ、特に鼻づまり症状に対する手術件数は全国トップクラスを誇る。

 4代目の理事長・院長を受け継ぎ、鼻腔と副鼻腔の手術を専門とする神尾友信院長が言う。

「慢性的な重度の鼻づまりを引き起こす疾患には、主に肥厚性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)があります。単科の専門病院ということから患者さんは難治の重症例が多く、首都圏近郊にとどまらず、北海道から沖縄、海外からも来院されます」

 肥厚性鼻炎は、アレルギー性鼻炎などで鼻粘膜の炎症を何年も繰り返すと次第に腫れの引きが悪くなり、粘膜が肥厚したままの状態になる。また、鼻づまりに即効性がある血管収縮薬(点鼻)を必要以上に頻用することでも起こる。

「常に両側の鼻づまりが起こるので入眠を妨げ、口呼吸になるのでイビキや睡眠時無呼吸の原因にもなる。それに、鼻からの吸気の加湿ができないので、風邪などもひきやすくなります」

 慢性副鼻腔炎は、鼻の周りにある空洞(副鼻腔)の粘膜に炎症が起こり、粘液や膿がたまる病気。一般的に細菌やウイルスの感染が原因になるが、近年はアレルギー性鼻炎が引き金になるケースが増えている。同院では、慢性副鼻腔炎の6~7割がアレルギー性という。

 肥厚性鼻炎も慢性副鼻腔炎も、薬を使う保存的治療が無効の場合に手術の対象になる。

「肥厚性鼻炎では、鼻腔を狭くしている下鼻甲介という部分の粘膜と骨の一部をメスで切除します。骨だけを切除する術式もありますが、当院では粘膜と骨の両方を取る下鼻甲介粘膜切除術を行っています。この方が、鼻の通りの満足度が高く、効果が長持ちするからです」

 2つの鼻の穴を区切っている鼻中隔の曲がりが強い症例では、曲がりを治す鼻中隔矯正術も加える。全身麻酔で正味の手術時間は、両側やって20~30分。入院は1週間だ。

 一方、慢性副鼻腔炎では、内視鏡でポリープなどの粘膜病変や膿などを取り除く内視鏡下副鼻腔手術(ESS)を行う。

「いち早く2001年に、副鼻腔内の手術器具の位置をリアルタイムで知ることができるナビゲーションシステムを導入(08年に保険適用)しています。常に手術の正確さと安全性を高めています」

 ESSの所要時間は1時間15分くらい。肥厚性鼻炎を合併しているケースも多く、下鼻甲介粘膜切除と鼻中隔矯正を同時に行うと1時間半くらいになるという。

 一般にESS後の再発率は10%未満とされる。1年内の再発率が65%と高い難病指定の好酸球性副鼻腔炎を除けば、同院の再発率は5~6%だ。

「当院の特色は、研修医はとらず、耳、鼻、頭頚部腫瘍とすべての領域分野においてベテランの専門医しかいないところです。それで安定した診療成績が出せて、患者さんの満足度も高いのです」

▽1911(明治44)年開業の耳鼻咽喉科単科の専門病院。
◆医師数=常勤11人(うち麻酔科医1人)
◆年間初診患者数=約1万6000人(紹介患者約15%)
◆手術件数(2014年度)=下鼻甲介粘膜切除術286人、内視鏡下副鼻腔手術235人