薬に頼らないこころの健康法Q&A

飲酒を前提とした向精神薬はない

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

【Q】
 斎藤彩(仮名、34歳)と申します。仕事は、法律事務所に勤務する弁護士です。半年前、案件の処理で悩んで、4カ月前からメンタルクリニックへ。「うつ病」と診断されました。抗うつ薬「パロキセチン20ミリグラム」1錠を夕食後に服用。院外薬局の薬剤師に「お酒はダメ」と注意を受けました。主治医からはお酒については何も言われていませんから、私は毎日3合飲んでいました。私にとってお酒はストレス解消法。飲もうが飲むまいが、個人の自由だと思うのですが、どうなのでしょうか。

【A】
 お酒を飲む、飲まないは確かに個人の自由です。成人に達した人は、自身の自由な意思に基づき飲酒行動を決定する権利があります。

 しかし、問題は権利だの義務だの自由だの責任だのといった法律の次元にはありません。パロキセチンを含め、すべての向精神薬(抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠導入剤、抗不安薬等)は断酒が原則。向精神薬のなかで飲酒継続を前提に開発された薬剤はありません。

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井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。