レジリエンス高め若々しく生きる

「胃」が健康なら病気になりにくい

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これまで、レジリエンス(回復力、抗病力)を身につける方法をいろいろと紹介してきましたが、それらを実践するためには、まず「胃」を整えることです。胃は単に食べ物を分解する臓器だと思っている方もいるでしょうが、実は全身の健康につながる重要な臓器なのです。

 たとえば、慢性胃炎がある人はアルツハイマー型認知症を発症するリスクが2倍になるというデータがあります。また、慢性胃炎がある人はパーキンソン病の薬が効きにくいこともわかっています。胃の不調は、脳神経系にも大きな影響を与えているのです。

 そればかりではなく、骨折しやすくなります。慢性胃炎があると、骨の質を保つために必要なカルシウムや葉酸の吸収が落ちるため、骨粗しょう症になりやすいのです。

 さらに、慢性胃炎の人は動脈硬化を起こしやすく、血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクがアップすることもわかってきました。人間は体の中に「ホモシステイン」という老化物質(アミノ酸の代謝産物)を持っています。人間の体を錆びつかせ、老化を促進させる悪玉の物質です。

 ホモシステインが体の中でうまく解毒されないと、体を錆びさせる「活性酸素」という毒素が増えてしまいます。この活性酸素が体の中で暴れ回り、全身の血管が動脈硬化を起こすのです。

 ホモシステインは、肝臓でビタミンB12と葉酸の助けを借りて、「メチオニン」と「システイン」という体に有用なものに分解されて置き変わります。しかし、ピロリ菌に感染した慢性胃炎の患者は、ビタミンB12と葉酸の吸収が悪いので欠乏気味になっています。このため、ホモシステインが分解されず、有害な活性酸素が増えて動脈硬化になりやすくなるのです。

 他にも慢性胃炎があると、せっかくビタミンCのサプリメントを飲んでも、胃液の中には有用なビタミンCが分泌されません。糖尿病の血糖コントロールが改善しにくくなったり、血液のがん(胃リンパ腫)や慢性じんましんを招いたりもします。

 胃を整えることがレジリエンスを身につける第一歩なのです。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。