重大な足のトラブルにも 「ウオノメ」を甘くみてはいけない

軽視するべからず
軽視するべからず(C)日刊ゲンダイ

 いつの間にか足の裏にできていて、歩くたびに痛むウオノメ。自分で削って対処すると深刻な病気につながる恐れがある。かといって、放置していても他の障害を招く危険もあるという。横浜総合病院創傷ケアセンター長の東田隆治氏(心臓血管外科)に詳しく聞いた。

 魚の目に似ていることから名づけられた“ウオノメ”は、足の裏や指の付け根といった特定の場所に継続的に圧力がかかることでできる。同じ部位に何度も刺激が加わると、皮膚の表面の角質がどんどん厚くなる。さらに、継続して“ねじり”の力が加わると中心部に硬い芯が生じ、その芯が皮膚の真皮まで伸びて神経を刺激する。すると、歩くたびに痛みを感じるようになる。

 厚く、硬くなって出っ張ったウオノメを自分で削って痛みを緩和させている人も多いが、これは避けた方がいい。

「ウオノメができるということは、必ず何らかの原因があります。たとえば、足の構造、関節の動き、歩き方、履いている靴によっても圧力がかかる場所は変わります。市販の薬を使って対処しても、ウオノメができた原因を解決しなければ、再発する可能性が高いのです」

 ウオノメそのものが、何らかの病気によって生じているケースは少ない。しかし、原因をハッキリさせなければ、深刻な足のトラブルを招く危険があるという。

「加齢とともに、関節の可動域が狭くなって歩き方が変わったり、足や足の指が変形するなどしてウオノメができる場合もあります。また、ウオノメをかばって歩くことで、ひざや股関節に痛みが出たり、悪化するケースも少なくありません。歩行が困難になる変形性膝関節症につながる人もいるので、軽視してはいけません」

 年をとってから、急にウオノメができた……なんて人は、かかりつけ医に相談して原因を特定し、対処した方がいい。

■下肢切断に至るケースも

 とりわけ、糖尿病や閉塞性動脈硬化症がある人は要注意だ。

「糖尿病や神経障害がある患者さんは、神経にダメージを受けているため、痛みを感じにくくなっています。ウオノメにさらに圧力がかかることで皮膚が損傷し、潰瘍ができるケースもあります。そこに細菌の感染が加わると、蜂窩織炎や骨髄炎を起こす場合もある。また、血流障害がある患者さんは足の末端まで血液が行き届かないため、壊疽を引き起こすリスクが非常に高くなります。それらが重篤化することによって、最悪の場合は下肢切断に至る場合もあります」

 高血糖の状態を知らずに放置していたり、自分の足が持つリスクや血流障害に気づいていない人もいる。たかがウオノメと甘く見てはいけないのだ。

 また、ウオノメを自分で削ることもリスクを伴う。糖尿病や血流障害のある人は、セルフケアで気づかずに傷をつけてしまうことで、そこから壊死や壊疽につながるケースもある。視力の低下や、糖尿病による神経障害を併発して痛みを感じにくくなっている高齢者は特に気を付けたい。

「ウオノメは医療機関で処置をしてもらった方が合併症のリスクは減ります。歯が痛くなったら歯医者に行くように、米国では足にトラブルがある場合は『足科』で診てもらうのが一般的です。ただ、日本ではまだ足を専門的に診る医療機関が少ないので、まずは皮膚科やかかりつけのクリニックで相談してください」

 ウオノメができるには必ず原因がある。セルフケアは控え、特に糖尿病や血流障害などの合併症がある人は、早めにフットケア外来などの足の専門医を探して診てもらったほうがいい。

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