独白 愉快な“病人”たち

政治評論家・有馬晴美さん(57) 胆のう結石(胆石)

有馬晴海氏
有馬晴海氏(C)日刊ゲンダイ

 1年前の春、胃のあたりのむかつきが1週間ほど続き、大阪出張に行ったときは2日間眠れなかった。東京に戻り、熱っぽい気もするので風邪かと思って、行きつけの病院に行きました。

 血液検査をすると、白血球数が普通なら8000ぐらいのところ、2万3000もあった。「これは異常事態だ」とエコー検査を受けると、胆のうに大きな石と膿がたまっていたのです。総合病院に救急転院。その日が土曜日だったので、日曜を挟み、2日後に胆のうを全摘出することになりました。

 摘出した結石は、卵のSサイズほど。最近ではこれほど大きな結石は珍しいそうです。これで破裂でもしたら命に関わるところでしたね。

 手術は腹腔鏡下で、へその周りをぐるりと切った。事前の説明では1時間半程度といわれていたのに、結石があまりに大きかったので6時間もかかった。妻は相当心配したみたいです。ただ、開腹手術をせずに済んだので、術後4日で退院し、すぐ仕事に復帰できました。

 それまでは多少血圧が高いくらいで、健康には自信がありました。けれど、手術の2~3カ月前から食後に上腹部がむかつき、自分で吐いていたんです。それでもまだ治まらず、吐くものがなくなってもスッキリしない。そのうえ人生初の便秘で、1週間も便が出なかった。「食べたら気持ちが悪いから食欲がない」の悪循環。焼き肉でも酒を早々に切り上げ、白ごはんを食べる僕としては、食欲がないなんてかなり珍しいことでした。胆のうは、食事に合わせて胆汁を出すことと、便意を起こすことが役割ですが、胆石が邪魔して正しく機能していなかったわけです。人生初の便秘を見過ごしてはいけなかった。

 思い返してみると、20年以上前から2~3カ月に一度くらい、食後に肋骨がつるというか、上腹部に胃けいれんのような違和感があった。因果関係ははっきりしないけれど、胆石と関係があったのかもしれないですね。

 胆のうを全摘してからは食事の制限もなく、特に生活に支障はありません。ただ病後は便を押し出す力が弱くなった気がするかな。

 それより、体を心配して食や行動をセーブする自分に“そんな年になったのか”とちょっと寂しく思います。30年前、中曽根元総理がおかゆしか食べなかったことを不思議に思ったものだけど、年齢に応じた食を心がけていくとそうなるのですね。最近は僕もサラダバーで野菜をとるように心掛けています。

 手術から半年後、「フラットな目で調べてくれる」と周囲にすすめられ、人間ドックを受けました。結果は異常なし。「まだ何か病気が潜んでいるのでは……」という不安が払拭できたという点で、意味があったかな。

 でも、“人間ドックのために何年も待つ”というのもどうなんでしょう。日本は「健全病人」が多すぎる。健康のために検査を受け、酒を飲まず、早寝をし、血眼でマラソンをする、死なないように生きる……。これはどうかと思います。高血圧でお世話になっている老医師は、僕に訥々とこう言うんです。

「病気を気にして生活しても楽しくありませんからね……。頭のどこかに“自分は高血圧の気がある”と入れておいてください。病気も運命です。酒やたばこ、体に悪いことをしても、病気にならない人はならないものですから」

 僕もそのくらい、おおらかに病気とつきあっていきたいと常々思います。

▽ありま・はるみ 1958年、長崎県生まれ。リクルート、国会議員秘書を経て、政治評論家に。現在、テレビやラジオ出演のほか、政治研究会「隗始塾」を主宰。06年ポスト小泉レースを、麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫・安倍晋三の4人の名前から「麻垣康三」と命名した。