耳鼻科の病気

突発性難聴はめまいを繰り返さない

「突発性難聴」とは、健康な人が明らかな原因なしに、左右どちらかの耳が聞こえなくなってしまう病気です。

 1993年の厚労省研究班の調査によると、全国での受療者数は推定年間2万4000人。100万人当たり192.4人でした。それが2001年には推定受療者数が年間3万5000人、100万人当たり275人と増加しています。この病気は50、60歳代に多いといわれますが、当院では若く元気な方の受診も多く、男女差はありません。糖尿病などの生活習慣病との関連もとりざたされていますが、はっきりしません。

 ウイルスによる感染や、耳の奥の内耳の血液の流れの障害なども原因としてあげられていますが、まだわかっていません。

 突発性難聴自体は、遺伝とは無関係です。しかし、遺伝性の難聴が進行して見つかることもあり、本人の病歴や家族の健康状態などをよく調べた上で診断する必要があります。

 突発性難聴は、副症状として、耳鳴りやめまいがありますが、めまい発作を繰り返すことはないといわれています。

 発症の前に耳鳴りやめまいを起こすことがありますが、その後、難聴がなければ突発性難聴とはいえません。診断では低音の難聴が起きるメニエール病の急性期難聴との鑑別が重要となります。

 治療法は、今までいろいろな薬が試されてきましたが、医学的に確立されたものはありません。まずは安静が一番でしょう。

 難聴の程度にもよりますが、軽度の場合は会社を早く切り上げたり、必ず定時に帰るようにしてもらっています。飲み会の参加は当然なし。

 中等度以上の場合は、やはり入院をまず勧めています。入院すると精密検査もできますし、入院という、いわば社会から一時隔絶された状態にすることで、ゆっくりと寝て、体も心も安静となると、私の経験上、治りも早いような気がします。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。