「立っている」だけでなぜ健康に? メカニズムを医師が解説

ソフトバンク孫正義氏の会見も「立ったまま」スタイル
ソフトバンク孫正義氏の会見も「立ったまま」スタイル(C)日刊ゲンダイ

「立つことのススメ」を説いた米ノンフィクションライターのトム・ラス氏の著書「座らない!」(新潮社)が話題を集めている。同書によると、人間が座って過ごしている時間は1日平均9.3時間。これが肥満や糖尿病などの健康問題を引き起こしているという。説得力を増しているのが、ラス氏の生い立ちだ。16歳でがん抑制遺伝子が機能しない遺伝性疾患と診断され、がん細胞が増殖する体質と闘いながら健康習慣に関する取材を重ねてきたという。

 立ち飲みや立ち食いがはやってはいるものの、確かに座っている時間は長い。デスクワークしかり、移動しかり、リラックスタイムしかり……。しかし、立っていることがそんなに体にいいのか。医学博士の米山公啓氏はこう言う。

「メタボや糖尿病予防でNEAT(非運動性活動熱産生)が推奨されているのと理屈は同じでしょう。要するに、日常動作でエネルギー消費を増やし、ためない体をつくろうということです。3時間立ちっぱなしの消費カロリーは、おにぎり1個分相当。立っている時間を増やせば、消費カロリーも比例して増えるわけです。なにより、立っていると交感神経が働いて緊張感が高まるので、副交感神経が優位になる座った状態よりもパフォーマンスが上がります。職場に取り入れている企業がちらほらあるようですが、デスクワークや会議を立ったままやれば効率アップが期待できます」

 1日の座位時間を「4時間未満」「4~8時間」「8~11時間」「11時間以上」に分け、45歳以上の男女22万人を対象にしたオーストラリアの調査によると、「11時間以上」の死亡リスクは「4時間未満」の40%も高かったという。

 仏科学史家のジョルジュ・カンギレムは「立ったまま考える」ことで知られ、学生にも「立って考えよ」と指導していたという。

 アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏もライブのように立ち回る記者会見を好んでいた。いまから思えば、なるほど納得だ。

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