介護の現場

入居者家族VSホーム

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 排泄がうまくいかないAさんは、時々ベッドのシーツを汚す。もちろん職員はシーツを交換し、部屋に消臭剤をまくが、どうしても臭いが残ってしまう。

 同ホームの施設長は言う。

「最近、神奈川県川崎市の老人ホームで起こった、入居者3人の短期間の事故死が社会の話題を集めました。これは考えられない事態です。入居者が廊下でつまずいてちょっと擦り傷を作った程度でも、家族に報告し、所轄の役所に報告書と、改善策を提示しなければなりません。まして事故死が3人も出るなど考えられません。また、私たちは懸命に介護していますが、その介護をめぐって家族とホームが対立するようなトラブルも少なくなく、頭の痛いところです」

 深夜、入居者からベルで起こされて、排泄の手伝いや紙オムツの交換。また、入居者同士のトラブルを善処するために説得しても、全く理解できない幼児のような入居者も少なくない。

「これが毎日です。私たちにも感情があり、手荒なまねはしませんが、大声を出したくなることもあります。でも、じっと耐えて介護につとめているのです。このあたりも、ご家族の人に理解いただけたらうれしいですね」(施設長)

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