どうなる! 日本の医療

重粒子線治療にコストを上回るメリットがあるのか?

「陽子線」「重粒子線」による粒子線治療は一部のがん治療に関して、既存のエックス線治療などと比べて優位性がないのではないか――。日本放射線腫瘍学会が、求められている優位性を示すデータを厚労省に提出できなかったことで、医療関係者の間から疑問の声が上がっている。

 今回は、その問題に関連して、粒子線治療施設の建設費や維持管理コストについて考えてみたい。

 粒子線治療施設は全国に14カ所ある。その草分けが重粒子線治療を行う「国立研究開発法人 放射線医学総合研究所(千葉県・通称放医研)」だ。放射線治療医が言う。

「重粒子線治療には、炭素イオン、重粒子をシンクロトロン(加速器)で加速するのにサッカー場ほどの広大な敷地が必要です。そのため、放医研では13.5万平方メートルの敷地に総額300億円近くを投じて、延べ面積10万平方メートルの新施設を造りました。この施設には年間億単位の電気料金がかかっています」

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