牛乳にはカルシウム等の栄養素が含まれており、健康的なイメージがあります。ところが2014年、「英国医師会誌」に「牛乳を1日約3杯以上摂取すると男女ともに死亡のリスクが、また女性では骨折のリスクが増加する」というスウェーデンの研究が報告されました。
衝撃的な報告ですが、牛乳の摂取がそれほど低くない人を研究対象にしていたうえ、骨折リスクの高い人はもともと牛乳の摂取が多かったのではないか、などの反論もありました。そのため、牛乳で死亡が増えるかどうかについては明確なことはいえず、日本人を対象とした研究ではないため、日本ではそれほど重視されませんでした。
そんな中、牛乳摂取と死亡のリスクを検討した観察研究が「日本疫学会誌」(2015年1月号)に掲載されました。この研究は40~79歳で脳卒中、がん、心臓病の既往のない日本人9万4980人を対象に、牛乳摂取と死亡の関連を19年(中央値)にわたり追跡したものです。
牛乳を飲む頻度は「全くない」「月に1~2回」「週1~2回」「週3~4回」「ほぼ毎日」の5つのカテゴリーに分類し、「全くない」と比較してカテゴリーと死亡のリスクを検討しています。
喫煙状況、アルコール摂取、高血圧や糖尿病歴など、結果に影響を与えうる因子を考慮して解析した結果、全く飲まない人に比べて、月に1~2回以上飲む男性では死亡のリスクが7~11%統計的にも有意に減少しました。一方、女性ではあまり明確な差は出ませんでした。
この研究では明確な死亡のリスク上昇が示されたわけではなく、むしろ男性ではリスク低下が示唆されていますが、その差はわずか。また、単に牛乳を飲む量を増やせば健康的とも言えない印象です。
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