Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【愛川欽也さんのケース(1)】高倉健も菅原文太も。最期まで仕事できた共通項

“キンキン”の愛称で親しまれた愛川欽也さん(C)日刊ゲンダイ

 昨年11月、高倉健さん(享年83)、菅原文太さん(享年81)という日本を代表する銀幕のスターがこの世を去りました。健さんは悪性リンパ腫(リンパ組織の悪性腫瘍)で、文太さんは膀胱がんでした。

 お2人とも最晩年までお元気で若々しく、とても80代とは思えませんでした。戦後の日本人の生活習慣はほぼ理想的で、体は年齢以上に若くなっています。しかし、がんは遺伝子の「経年変化」と言える病気ですから、どんなに若々しくても、年齢とともにそのリスクが急増します。日本は猛スピードで高齢化が進んでいますから、今後も若くて元気な高齢者に、がんが増えることは間違いありません。

 さて、健さんも文太さんも、亡くなる数週間前まで普段と同じような生活をされたと聞いています。とくに、文太さんには、膀胱がんの陽子線治療をお勧めしたご縁もあり、昨年10月に食事に誘っていただきました。痩せてはおられましたが、背筋を正して食事をされていた姿がいまも目に浮かんできます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。