Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【愛川欽也さんのケース(1)】高倉健も菅原文太も。最期まで仕事できた共通項

“キンキン”の愛称で親しまれた愛川欽也さん(C)日刊ゲンダイ

 このように、亡くなる直前まで元気に生活されていたのはキンキンだけではないのです。大沢親分も、健さんも文太さんもそうでした。しかも皆さん高齢です。その点から考えると、悲痛な記者会見から1カ月で亡くなった俳優の今井雅之さんは対照的です。享年54とまだまだ働き盛りでした。

 元気に仕事ができた3人の高齢がん患者さんに共通するのは、末期になってから負担の大きな抗がん剤治療を受けなかったこと。今井さんのように抗がん剤の副作用で痩せ、痛みに苦しむようになると、死期が近くなり、寿命を縮める結果になることさえあります。

 ときには、体への負担が大きい治療をせず、がんと闘わないことが、ベストな戦術となることもあるといえます。

中川恵一・東大医学部付属病院放射線科准教授

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。