天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

いきなり手術が必要なケースは少ない

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ


 昨年末に僧帽弁閉鎖不全症と診断され、経過観察中です。しかし、いつ発作が起こるか不安なので、すぐに手術を受けた方がいいのではないかと考えています。まだ手術は受けない方がいいのでしょうか。(75歳・女性)


 心臓にトラブルがあると診断され、心臓エコーやCTなどで素人目にもわかる異常な部分を指摘されると、「すぐにでも命に関わるような事態を招くのではないか……」と不安に思う患者さんはたくさんいます。

 しかし、心臓病は多くの場合、いきなり手術や高度な治療を行う必要性は少ないといえます。病変があったとしても、心臓自体の機能を損なう場合や、胸痛、息切れ、動悸といった自覚症状が出て生活に支障を来すまでは“待てる”ことが多く、定期的な再検査や投薬などの初期治療で、ワンクッション置ける“余裕”があるケースがほとんどです。まずは経過観察をして、自覚症状が出てきたら手術を検討するものだと考えていいでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。