Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【愛川欽也さんのケース(2)】人知れず闘病できた裏に緩和ケアあり

愛川欽也さん(C)日刊ゲンダイ

 2人の明暗を分けたのは、何か。治療法の違いにある可能性が高いと思います。今井さんが受けた抗がん剤は、注射にしろ服薬にしろ、薬剤が全身に及ぶため、効果も副作用も全身に広がります。今井さん自身、倦怠感や食欲不振といった抗がん剤の副作用のつらさを語っていました。

 ところが、放射線は治療範囲も副作用も、投射される部分に限られるため、抗がん剤のような副作用に苦しめられることが少ないのです。

 もちろん、根治が狙える状態であれば、徹底的に闘う姿勢も理解できます。しかし、愛川さんのように末期に近い状況なら、自分の理想の生き方を軸に、治療の効果によるメリットと、副作用によるデメリットをてんびんにかけて判断すればいい。愛川さんのように仕事を続けたり、余生を楽しんだりしながら闘病したい人にとって、放射線は有力な選択肢になると思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。