天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

気温や気圧の対応で心臓に負担がかかる

 また、体温を調節するために汗をかいて脱水傾向が強くなると血液の量が減ってしまい、少なくなった血液を体全体に送らなければならない心臓は、心拍数を増やします。血栓もできやすくなるため、心筋梗塞や心不全といった心臓病を引き起こしやすくなります。

 気温や気圧の急激な変化に対し、体内の状態を一定に保つためのさまざまなシステムが、心臓に負荷をかけてしまうのです。

 実際、季節の変わり目になると、心臓にトラブルを起こした患者さんが増えます。急に暑くなった今年の7月初めには、解離性大動脈瘤(大動脈解離)で救急搬送された患者さんの緊急手術を立て続けに2件行いました。動脈硬化や外傷によって大動脈の一部が膨らんで“こぶ”のようになり、何の前触れもなく、いきなり血管が裂ける病気です。1度目の発症で突然死するケースも少なくありません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。