天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

気温や気圧の対応で心臓に負担がかかる

 急激な気温の変化に血圧が上下動し、傷んでいた血管が対応できなかったのでしょう。1人目は、会社の重要な会議中に急に症状が出たそうです。気温の変化に加え、非常に緊張する状況がさらに血圧を上昇させたと考えられます。もうひとりの患者さんは、ゴルフをやっている最中に症状が表れたといいます。昔から、大きなプレッシャーがかかる1・5メートル程度のパットを打つときが心臓にいちばん良くないといわれています。呼吸が普段と変わって血圧も一気に上がるため、心臓に負担がかかるのです。

 このように、季節の変わり目には心臓トラブルが増えるため、患者さんには普段よりも心臓の状態に注意するよう指導しています。「きちんと血圧を測って異常がないかどうかをチェックする」「うっかりして薬を飲み忘れないようにする」「足にむくみが出たら、かかりつけ医に診てもらう」といったことを確認します。そうやってこちらから声をかけておけば、患者さんは普段よりも心臓の状態の変化を気にするようになるため、深刻なトラブルの予防につながるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。