20年ぶり新薬登場で注目の「胃食道逆流症」3つの注意点

“胸焼け”は治るのだ
“胸焼け”は治るのだ(C)日刊ゲンダイ

「胃食道逆流症」は、胃酸など胃の内容物が食道に逆流して起こる病気の総称で、胸焼けや食道炎を引き起こす。この病気に対する新薬が20年ぶりに発売され、改めて注目を集めている。

 胃食道逆流症(GERD)は、(1)「内視鏡検査で粘膜のただれなど異常が見られるもの」(2)「異常が見られないもの」の2つに大別でき、(1)を「逆流性食道炎」、(2)を「非びらん性胃食道逆流症」と呼ぶ。

 (1)であっても症状をほとんど感じていない人、(2)でも症状を強く感じる人などさまざまで、「目に見える異常」と「症状の強さ」は必ずしも一致していない。

「今年2月に発売された新薬ボノプラザン(一般名)は、逆流性食道炎の患者さんが対象で、既存薬が効きにくい重症例でも高い効果が期待できます」

 国立国際医療研究センター消化器内科・秋山純一医長がこう説明する。

 これまでは、胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害剤(PPI)という治療薬が使われていたが、弱点もあった。

「逆流性食道炎のうち、軽症例ではほぼ9割に効きます。しかし、重症例では、胃酸の逆流量が多く、既存薬では効果は不十分でした。ボノプラザンは従来のPPIとは異なる作用機序を持っていて、より強力に胃酸分泌を抑えられるのです」

 試験では、重症例でも4週間の服用で94%、8週間で96%に治癒が得られるという好成績だった。長期服用による副作用も懸念され、慎重に使わなければならないが、画期的な薬であることは間違いない。

 問題は、今回の新薬の対象外である「逆流性食道炎ではない胃食道逆流症」、つまり「非びらん性胃食道逆流症」だ。

「これらの患者さんは、胃酸の逆流だけが原因とは限りません。胃酸以外の逆流、ストレス、食道の粘膜の過敏性など、原因が複合的に絡まり合っていることが考えられるため、胃酸の分泌を抑制するだけでは症状を抑えられず、“PPIが効かない”人は、むしろ逆流性食道炎よりも多いのです」

■意外に多い「間違った薬の飲み方」

 では、従来のPPIが効かない場合、どのようなことに注意すればよいのか? 「食べ過ぎ」「脂っこい食事」「食後すぐ寝る」など、胃の内容物の逆流を起こしやすい食生活を見直した上で、まずチェックすべきは「PPIの飲み方」だ。

「PPIが効かない患者さんの中には、飲み忘れがあったり、飲むタイミングが適切でない人が結構います。一般的には“食後に飲んでください”と言われますが、一日の中で最初の食事の30分前に飲んだ方が薬の血中濃度が高くなるので、効き目が悪ければ、食前に飲むことをお勧めします」

 次に、「胃の働き」のチェックだ。胃に入った食物は正常に排出されているか? 

「胃排出遅延のタイプでは、PPIが胃に停滞することで“失活”してしまうため、PPIの剤型を変えたり、胃の動きを促進する薬を追加するとよく効くことがあります」

 さらに、「そもそも胃食道逆流症なのか」のチェック。開業医から「PPIが効かない」と紹介されてきた患者を秋山医長が調べると、食物アレルギーによる食道炎で、別の治療が必要だったケースもある。

「全てチェックして、それでもよくならなければ、pHモニタリングという特殊な機械による検査を受け、胃食道逆流症の原因を詳細に探ってください」

 あなたはどうだろう?

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