天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ペースメーカーのリード断裂は珍しいトラブルではない

 電池の寿命は、かつては5年程度でしたが、最近は7~10年はもつようになりました。ご質問のように15年間で4回の入れ替えを行っているとなると、おそらくリードのトラブルによるものだと考えられます。

 リードは非常に細いので、単に1本の導線のみでは心臓の拍動による影響ですぐに傷んでしまいます。そのため、細い線をらせん状にして強度を高め、外側をシリコーン製の絶縁体で覆ってあります。リードが2本ある双極タイプは、そのリードの外側に2本目のリードをらせん状に巻き、さらにシリコーンで覆ったものが一般的です。

 ペースメーカーを埋め込む際、リードを固定するために糸をギュッと締め過ぎるとリードを覆ったシリコーンが破れ、そこから血液がジワジワ浸入して金属製のリードが腐食してしまい、機能しなくなるケースがあります。また、2本のリードの間にあるシリコーンの量や材質に問題があると、リードがショートしてアッという間に電池が消耗してしまいます。かつては、断裂しやすいリードを使っているメーカーもありました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。