高血糖によって網膜の血管が詰まったり変形するなどして血液が流れにくくなると、それをカバーするために新生血管が作られます。病状の進行とともに、その新生血管は網膜や硝子体に向かって伸びていきますが、非常にもろく、破れて出血しやすいので、硝子体に出血することがあります。こうした網膜症の増殖期の患者さんや、硝子体出血を繰り返しているような場合は、やはり手術は様子を見たほうが賢明です。
かつて、同じように網膜に出血を起こしていて、心臓手術が優先される段階に入っている患者さんを手術したことがあります。そのときも、まずは網膜の出血が進行しないようレーザー凝固治療を行い、同時に薬剤で血糖状態をコントロールし、6カ月以上再発していないことを確認したうえで手術を行いました。
ヘパリンの投与によって出血しやすくなっている状態を少しでも短くするため、短時間で手術を終わらせるアプローチも必要でした。出血を繰り返しているような合併症がある患者さんの手術は、それだけ注意が必要になるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」