先週取り上げた慢性硬膜下血腫のように、脳血管の出血を伴う病気を抱えている患者さんの手術も慎重に臨まなければなりません。以前、海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻という病気を合併している心房細動の患者さんを診た経験があります。
海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻とは、脳の大きな静脈に動脈が直接流れ込んで起こる病気で、脳の周囲が腫れたり、出血を起こすケースがあります。その患者さんは、心房細動の治療で血液をサラサラにする抗凝固剤を飲んでいましたが、薬を服用していると硬膜下に血液が染み出してたまり、止めると血液が吸収されてなくなるという状態を繰り返していました。
その状態を回避するため、抗凝固剤を飲まなくて済むように心房細動を治すメイズ手術が検討されたのですが、結局、手術はしませんでした。それまで服用していた抗凝固剤よりも効果の発現が早く、効きすぎによる出血のリスクも低い薬を使うことになったのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」